ペットとの生活に関する記事

【獣医師が解説】ペットの病気編:テーマ「動物医療費とペット保険」

新聞・テレビを見ていると昨年から値上げのニュースでいっぱいです。コロナ禍明けの経済活動の復活と人手不足、世界各地で発生する紛争や天候不順による農作物の収穫減少など理由はさまざまです。新型コロナの流行は新規ペット飼育頭数を増やしましたが、現在の物価高はペットの飼育コストも押し上げています。その中で今回はペットの医療関係費がテーマです。

【ペットの医療費】

ペットを動物病院で診てもらったあとに料金を支払いますが、この時「診療明細書」を受け取っていますか?明細書には診療項目や事務作業費などが細かに記載されています。この診療明細書は後で紹介するペット保険の支払い申請時に必要になりますので、大切に保管しておきましょう。

さまざまな診療料金

明細書に記載されている診療項目の料金設定は動物病院により異なります。日本獣医師会が令和3年に全国のペット診療獣医師を対象とする診療料金のアンケート調査を実施しました(回答数1,096人)。

料金の中央値ではまず初診料(1,500円)、往診料(2,500円)、深夜診療費(6,250円)となっています。入院料はペットのサイズにより小型犬(2,500円)、中大型犬(4,000円)、特大犬(6,250円)と増額します。またワクチン料も狂犬病(4,000円)~犬混合(8.750円)、猫混合(6,250円)とアップします。

検査ではエックス線・エコー(4,000円)、内視鏡(22,500円)、MRI(45,000円)です。そして手術では去勢(イヌ:17,500円、ネコ:12,500円)、避妊(イヌ:27,500円、ネコ:22,500円)、前肢/後肢骨折(62,500円)、椎間板ヘルニア(87,500円)などこれらも高額です。

一般に内科/外科の治療では採血、血液/微生物検査、麻酔、輸血、手術、投薬などが複合的に実施されるため、実際の診療費はどんどん加算されます。

医療費の推移

この5年間でペットの医療費(診療費)はどれくらい値上がりしたか?というのを計算したデータがあります。1か月あたりのイヌの平均医療費は2017年では3,335円でしたが2022年には4,653円、ネコでは2017年は2,528円、2022年は2,392円でした(熊沢由弘 一般社団法人 JA共済総合研究所 2023年)。

そして年々アップする医療費にフード・おやつ、おもちゃ、トリミング、ペット保険料などその他諸々の費用を加え、これに寿命を掛け算して算出した生涯必要経費はイヌで約250万円、ネコでは約130万と試算されました。

【ペット保険の普及】

ペットの寿命が延びるのはうれしいことですが、これに伴い医療費も増えてゆきます。そこで頼りになるのがペット保険です。皆さんはペット保険に入っていますか?

ペットの保険会社

ペット保険を提供する保険会社は2023年時点で18社あり、その内7社は損害保険会社、残り11社は少額短期保険会社です(熊沢 2023年)。時々耳にする少額短期保険とは2006年の改正保険業法により新しく生まれた制度で、保険金額が少額(1,000万円以内)、保険期間が短期(2年以内)の保険のみを扱うものをいいます。

ペット保険は任意加入であり、補償割合は保険商品により異なります。また予防に関する項目(ワクチン接種料、フィラリア・ノミ・ダニの駆虫薬、健康診断など)や去勢/避妊、歯石除去、診療加算料(時間外、往診など)などは基本的に補償対象外です。すでに加入済みの方は、改めてパンフレット・契約書の記載内容を確認しましょう。

普及率の伸び

私たち日本国民は職種(自営業、サラリーマン、公務員など)による種類の違いはありますが、全員が医療保険に加入しています。これを国民皆保険制度といいます。対してペット保険は原則、通院・入院・手術を補償対象とする任意加入です。

2017年から2022年までのペット保険の普及率を見てみると、10%程度から倍近くの18.6%まで年々増加しています(熊沢 2023年)。とはいえ、海外の普及率はイギリス(25%)、スウェーデン(50%)などといわれており、まだまだ低い感があります。ペットの高齢化、動物医療の高度化に伴い、医療費の増加は避けられないことから、今後日本のペット保険普及率はさらに伸びてゆくでしょう。

高いイヌの契約率

現在、ペット飼育頭数はネコがイヌを上回っています。ではペット保険の契約頭数ではイヌとネコではどちらが多いのでしょうか?ペット保険シェアの約40%を占めるアニコム損保の契約頭数から算出すると、イヌ(約80%)に対しネコ(約20%)の比率になっています。

この理由の1つは動物病院での受療頻度です。1年間に診療を受ける平均回数はイヌ(4.97回)、ネコ(2.62回)というデータがあります。愛犬オーナーはおよそ年間5回の診療費対策として、ペット保険の利用により高い関心があるのでしょう。

ネコに比べてイヌの保険契約率が高い理由として、もう1つ入手ルートが関係しています。イヌの入手先は1位ペットショップ(51.9%)と2位ブリーダー(16.3%)で全体の70%近くを占めています(熊沢 2023年)。これらはペット保険の代理店を兼ねている例が多く、愛犬オーナーは入手した時点から保険の必要性などの情報を得ています。

対してネコは野良猫を拾った(32.1%)、友人・知人から譲り受けた(26.7%)と無償入手の割合が高いようです。このような理由から現在のところ、ペット保険の主流はイヌということになりますが、今後は飼育頭数の増加を反映してネコの契約比率がアップすることが予想されます。

【動物医療関係費】

最後に医療費と保険料がペット飼育全体のコストに占める割合を確認しましょう。

ペットの保険料

ペット保険の費用は保険会社や保険商品/補償内容などによりまちまちです。ここ数年間の1か月あたりの平均保険料の推移を見てみると、イヌでは2017年(2,662円)から2022年(2,885円)と目立った値上がりはなくほぼ横ばい状態です。またネコでも2017年(2.096年)から2022年(2,069円)と同様の動きです(熊沢 2023年)。

保険料がほぼ変わらないというのはオーナーの皆さんにとって有難いことですが、先ほど示したように実際の医療費は年々アップしています。以前と比べて近頃のペット保険は、補償内容の改定や補償割合が縮小された商品に切り替わってきているようです。つまり保険の「旨み」が低下してきた感があります。

ペット医療関係費

私たちのペットが病気になったりケガをすれば、その都度医療費(診療費)が発生します。同時にこの医療費負担を軽くするためにペット保険料を毎月払い込みます。ここで医療費+保険料合わせてペット医療関係費と呼んでみましょう。

ペット飼育に必要な費用の主要項目は主食用フード費、医療費、ペット保険料です。今回参考にしている熊沢の報告では、2022年1か月あたりのイヌの飼育コストは13,904円、医療費+保険料=7,538円となり医療関係費が占める割合は54.2%となります。同様にネコの1か月飼育コストは7,286円、医療関係費は4,461円、その割合は61.2%と算出されています。

このようにペット飼育に必要な支出総額の55~60%は医療関係費が占めています。物価上昇対策としてペットの飼育コストもできれば抑えたいものですが、フード代をカットするわけにはいきません。すると削減対象はこの医療関係費、中でも医療費(診療費)ということになります。

大きな診療費用が発生するペットの病気予防には定期的な健康診断(早期発見・早期治療)、ケガの少ない丈夫な筋肉・骨づくりのためには栄養価に優れたフードと運動が大切です。これに加え健康機能をもつ食材の利用(サプリメント、おやつなど)も有効です。これらを上手に活用しトータルの飼育コストを抑えてゆきましょう。

ペットの飼育において病気やケガを避けることはできません。そしてその発生率はペットの年齢に伴いどんどん上昇します。私たちヒトの場合、年々アップしてゆく医療関係費(診療費、保険料)を少しでも抑える方法として近年ジェネリック薬の活用が広まってきています。次回はペットの世界でも伸展しつつある動物用ジェネリック医薬品について考えます。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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