獣医師が解説

【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「運動能力アップにダチョウ肉」

現在、少しずつ認知度がアップしてきている赤身肉がダチョウの肉です。ダチョウは飼育時の環境負荷が小さく、産肉効率が良いためウシ・ブタ・ニワトリに次ぐ「第4の肉」とも称されています。今回はダチョウ肉を食べた場合に期待される運動機能性を紹介します。

【ダチョウ肉料理の評価】

情報だけが先行し、スーパーでの販売場面を見ることのないダチョウ肉ですが、実際に食べた場合他の肉料理と比べて美味しいのでしょうか?

いろいろな料理の評価

ダチョウ肉料理が私たち日本人の味覚に合うかを調べた報告があります(千 裕美ら 飯田女子短期大学1997年)。一般の肉とダチョウ肉でそれぞれ同じ料理を作り、20~60代の男女合計32人に試食してもらいました。外観、テクスチャー(噛み応え・舌触り)、香り、味などの項目についてダチョウ肉の方が良い(0~+2)、悪い(0~-2)で評価しました。

総合評価の結果を見ると、寿司ネタとしてはマグロに比べマイナスポイントでしたが、牛肉・豚肉・馬肉などの畜肉料理ではプラス評価となりました。中でも刺身やたたきといった生肉系メニューの評価が良好でした。ダチョウ肉は一般肉と比べても遜色ない良好な風味をもつ肉食材といえそうです。

血中アミノ酸量の変化

なかなか美味しそうな肉であることが判ったダチョウ肉ですが、その栄養成分はどうでしょう。赤身肉=タンパク質は食べて消化されると、複数種類のアミノ酸に分解され血中に取り込まれます。この血中アミノ酸量の変化を測定した次のデータを見てみましょう(小椋真理ら 同志社大学/糖化ストレス研究センター 2020年)。

●被験者 健常者12人(平均年齢33.3歳)
●被験食
  試験食 …朝食にダチョウ肉メニュー摂取×7日間
  対照食 …朝食に通常の食事メニュー摂取×7日間
●検査内容 30分間の歩行運動後の血中アミノ酸量を測定

上記の設定で試験をした結果、大きな差が認められたアミノ酸としてバリン、ロイシン、イソロイシンがありました。ダチョウ肉の食事を摂っていた期間中のこれらアミノ酸の血中量は増加し高い値を維持しましたが、通常の食事に切り替えたところおよそ30%もの低下が見られました。
  

筋肉合成の活性化

バリン、ロイシン、イソロイシンというアミノ酸の名前を聞いてピンと来た方は少なくないと思います。この3つはBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれるもので、運動時に筋肉のエネルギー源となるものです。具体的には筋タンパク質の合成を促進し、持久運動時の筋損傷を軽減します。

ダチョウ肉の食事期間中は30分間の歩行運動後もBCAA(3アミノ酸の総量)は増加していますが、通常食事期間中は大きく減少します。このようにダチョウ肉には持久運動時にダメージを受ける筋肉を応援する働きがあることが判ります。

【ダチョウ肉vs鶏むね肉】

ここで同じ鳥類として、ダチョウ肉と鶏むね肉を比較してみましょう。健常者9人(平均年齢23.0歳)を対象に共にタンパク質量を20gに調整したダチョウ肉食と鶏むね肉食を朝食として7日間摂取してもらい、血中アミノ酸や血球数などを測定した報告があります(米井嘉一ら 同志社大学/糖化ストレス研究センター 2024年)。

赤血球ヘモグロビンの増加

前回、ダチョウ肉には鉄分が多いという話をしました。鉄分は赤血球ヘモグロビンの構成ミネラルです。ダチョウ肉と鶏むね肉を食事として摂った後の赤血球ヘモグロビン量を見ると、1日目は共に減少し、7日目には同程度までに戻る傾向がありました。この時、1日目の減少率はダチョウ肉の方が軽度でした。

ダチョウ肉には牛肉・豚肉・鶏肉の2~4倍ほどの鉄分が含まれています。この鉄分は体内で吸収され、赤血球のヘモグロビン合成に係わることになります。ヘモグロビンは酸素を体内各所に運ぶ働きをしているため、特に頻繁に運動する成長期のヒトやペットのタンパク質源として有用と考えられます。

血中タウリンの増加

タウリンというアミノ酸があります。私たちが飲む栄養ドリンクに入っていたり、ネコの必須アミノ酸として知られています。タウリンはイカ・タコ・貝類など魚介類に多く含まれ肉類には少ないのですが、鶏肉では比較的多いとされます。

上記の設定で試験をした時の血中タウリン量を測定したところ、ダチョウ肉の食事を摂った7日後には開始前のおよそ50%アップしていることが確認されました。米井の報告によると100gあたりのタウリン含有量は魚介類(800~1,000㎎)、牛肉・豚肉(20~30㎎)、鶏肉(もも:400㎎、むね:30㎎)、ダチョウ肉(120㎎)とされます。ダチョウ肉は鉄分と並びタウリンも豊富です。

【ダチョウ肉と運動能力】

ダチョウは空を飛べませんが、その代わり時速60kmで10分間以上走り続けることができるといいます(自動車並みのスピードです)。この運動能力は強靭な脚の筋肉とそれに含まれる豊富なタウリンによるものです。タウリンには運動パフォーマンスの向上や疲労感の軽減といった機能があるとされます。

限界運動能力アップ

ここでダチョウ肉にたくさん含まれるタウリンというアミノ酸の作用について紹介します。実験動物にタウリンを与えるとどれくらい運動能力がアップするのかを確認した報告です(石倉恵介 筑波大学 平成23年度)。

ラットを試験群(7匹)と対照群(6匹)の2グループに分け、試験群には3%タウリン水溶液を3週間給与しました。両群のラットに走行運動をさせ、疲労困ぱいで走れなくなるまでの時間を測定したところ、対照群と比べて試験群ラットはおよそ30%も長かったという結果でした。

タウリンを摂取することで(瞬発的な運動ではなく)長時間の持久性運動能力が向上したことが判ります。

日常的なタウリン補給

ランニングやジョギングのような持久性の運動は有酸素運動に該当します。しっかりと酸素を吸って体内の脂肪を燃焼させるため、ダイエット効果があります。今回の走行運動では脚部の筋肉が主体になっているため、同試験ではラットのふくらはぎ部分の筋肉中のタウリン量を測定しています。

筋肉には白色の速筋(瞬発運動を担当)と赤色の遅筋(持続運動を担当)があります。両群ラットのふくらはぎ筋肉中のタウリン量を比較すると、試験群では速筋・遅筋共に約30~50%も多くのタウリンが含まれていました。これが運動による筋肉疲労を軽減させていた一因と考えられます。

実験では3週間の給与期間が設定されていたことから、運動機能の向上には日頃からのタウリン補給、すなわちダチョウ肉などの食事を通して摂取することが大切であるといえます。

ダチョウ肉は鉄分、BCAA、タウリンを豊富に含む赤身肉です。この特徴は持続性運動/有酸素運動時に体内各所に十分な酸素を供給し(鉄、ヘモグロビン担当)、筋肉では運動疲労の軽減(タウリン担当)、損傷した筋肉の合成(BCAA担当)を意味しています。

ペットでは育ち盛り時の筋肉づくり、肥満が始まる老齢準備時の体重管理など、それぞれの成長ステージで毎日の運動は欠かせません。幼齢期から老齢期まで、一生涯を通して運動パフォーマンスの向上にダチョウ肉フードは大いに有用と考えられます。

(以上)

ダチョウ肉は高タンパク&低カロリーなヘルシーお肉です。
体重管理をしたい子や体を維持したいシニアにもおすすめ。


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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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