熱中症を含め日々の健康維持において肥満は大敵です。この肥満対策としてアスタキサンチンには筋肉量を落とさず、余分な脂肪を優先的に燃焼させる作用があります。今回はアスタキサンチンの運動能力に対する機能を紹介します。
目次
【海のカロテン】
元々アスタキサンチンは海産物に由来する単なる赤い色素というだけのものでしたが、1980年代に強力な抗酸化活性があることが発見されました。このことからアスタキサンチンは「海のカロテン」と呼ばれています。
抗酸化物質アスタキサンチン
このコラムではさまざまな抗酸化物質を紹介してきました。その中でアスタキサンチンの立ち位置を確認しましょう。抗酸化活性をもつ食材は大きくビタミン、カロテノイド、ポリフェノールの3つのグループに分けることができます。
ビタミンではビタミンC(レモンなどの柑橘類)、ビタミンE(植物油)があります。またポリフェノールとしてはブドウやナスの皮に含まれる紫色成分のアントシアニン、お茶の渋み成分のタンニンやカテキン、大豆のイソフラボンが有名です。
カロテノイドは野菜に含まれる橙色や赤色の色素成分として広く知られています。この中にβカロテン(ニンジン、カボチャ)、リコピン(トマト、スイカ)、ルテイン、そして今回のアスタキサンチンがあります。アスタキサンチンが「海のカロテン」と呼ばれるのはサケやエビ・カニといった海産物に含まれているためです。
アスタキサンチンを含む食材
赤色をした海産物といえばサケやイクラがあります。重量1kgあたりのアスタキサンチン含有量を調べてみると、イクラ(0~14㎎)、サケ(3~40㎎)、オキアミ(46~130㎎)、エビ・カニ(~400㎎)とされています。
ではこれら食材を赤く染めているアスタキサンチンはそもそも何に由来しているのでしょうか?それは水中に生息しているプランクトンなどの微生物です。植物プランクトン→動物プランクトン→小魚→大きな魚といったいわゆる食物連鎖により少しずつサケやエビ・カニの体に蓄積されていました。
なお現在、サプリメントや化粧品など商品化されているアスタキサンチンの原料は淡水産のヘマトコッカス藻という植物プランクトンの一種です。なんとその含有量は1万~8万㎎/kgと桁違いの量です。(機会があれば原材料欄をよく確認してみて下さい)
【運動パフォーマンス】
アスタキサンチンには脂肪を燃焼させて肥満を抑制する作用があります。この時、運動とセットにするとさらにその作用は強化されます。ここではアスタキサンチンがもつ運動能力アップ機能を紹介します。
多彩な健康機能
単に赤い色素であったアスタキサンチンに今では多種多様な健康機能が報告されています。まず1つ目は抗酸化作用です。アスタキサンチンはその作用機序の違いからβカロテンの40倍、ビタミンEの1,000倍の抗酸化力があるとされています。
2つ目は糖・脂肪の代謝改善です。メタボリックシンドローム対策として、血糖値の上昇を抑えたり、肝機能を改善し中性脂肪を減少させる作用があります。なお、この働きは肥満犬を対象にした実験においても確認されています(村井 妙ら 日本獣医生命科学大学 2019年)。
さらに近年では皮膚の健康維持、免疫力の強化、がん転移の抑制、脳の活性化などの研究報告があります。アスタキサンチンは私たちヒトやペットのQOL(生活の質)の維持・向上にいろいろと役立ちそうです。
無酸素運動
アスタキサンチンがもつ健康機能として運動能力に関するものがあります。日常的にスポーツを行っている男子大学生18名を2グループに分け、一方をアスタキサンチン摂取群(12mg/日:9人)、他方を非摂取群(9人)としました。そして4週間後に自転車ペダリング運動を実施してもらいました。
7秒間の全力ペダリング中の最大値であるピークパワーを測定したところ、非摂取群では試験開始時と4週後に数値の変化はありませんでしたが、摂取群では約4%の増加が見られました。(坂水千恵ら ㈱ナチュリル 2009年)。
このよう短時間に全力を出し切るような運動を無酸素運動といいます。ちょうどドッグランでの愛犬の走り込みに相当します。無酸素運動において、アスタキサンチンはその能力をアップさせる作用があります。
有酸素運動
運動のもう1つのタイプとして、愛犬の散歩のように呼吸をしながら継続的に行うものを有酸素運動といいます。この運動に対するアスタキサンチンの作用を確認した次のような試験報告があります(Ikeuchi 東京海洋大学 2008年)。
●供試動物 マウス
●グループ
対照群(10匹)…通常のエサ
試験群(各10匹)…アスタキサンチン添加エサ(1.2㎎、6㎎、30㎎/kg)
●負荷遊泳運動
マウスに体重の5%相当の重りを付けて遊泳させる
●測定項目
遊泳継続時間、筋肉の損傷
上記の条件の元で3週間飼育し遊泳運動をさせたところ、対照群マウスよりも試験群マウスの方が長い時間泳ぐことができました。しかもマウス体重kgあたりのアスタキサンチン添加量が多いエサを与えられていた群ほどその時間は長いことが判りました。
このように短時間に大きな力を出し切る無酸素運動、体に軽い負荷をかけて長時間継続的に行う有酸素運動のどちらにおいても、アスタキサンチンはそのパフォーマンスをアップさせる働きがあります。
【筋損傷と抗酸化力】
アスタキサンチンは瞬発的/持続的、共に筋肉の運動を応援する能力をもつことが判りましたが、その理由は何でしょうか?最後にこの点について考えてみましょう。
運動後の筋損傷低減
筋肉が運動を行うと少なからず損傷が起きます。損傷部位からは筋細胞内部に含まれている物質が血中に漏れ出しますが、その1つにクレアチンキナーゼ(CK)という酵素があります。このCKは筋運動の際に発生する熱エネルギーの産生に関与する酵素です。これより血中CK活性を測定することで筋肉の損傷度合いが判定できます。
先程の試験の続きで15分間の遊泳運動後のマウスの血中CK活性を測定したところ、全群において運動前後では値の増加が確認されました。この中で対照群と試験群(1.2㎎、6㎎添加)の3群の増加率が35%前後であったのに対し、アスタキサンチン30㎎添加群では20%に抑えられていました。
血中のクレアチンキナーゼ活性は筋の損傷度合いを表しているため、アスタキサンチンは筋肉のダメージを軽度に抑えることにより、運動能力を向上させていたと考えられます。
運動機能と抗酸化力
マウスの遊泳運動は呼吸を伴う有酸素運動の1つです。筋細胞は呼吸基質を酸素で燃焼させ、エネルギーを取り出して運動に使っていました。この時、何かが筋細胞を傷付けているのですが、その犯人は活性酸素です。
体内の活性酸素を取り除くのが抗酸化物質のしごとです。冒頭で抗酸化物質にはいろいろなものがあることを紹介しましたが、Ikeuchiの試験では有酸素運動において筋肉のダメージを最も和らげる効果がある抗酸化物質を検討しています。
●供試動物 マウス
●グループ
対照群(10匹)…通常のエサ
試験群(各10匹)
:βカロテン添加エサ(30㎎/kg)
:ビタミンC、E添加エサ(各100㎎/kg)
:アスタキサンチン添加エサ(30㎎/kg)
●負荷遊泳運動
マウスに体重の7%相当の重りを付けて遊泳させる
●測定項目
遊泳継続時間
このような条件の元で6週間飼育し遊泳させた結果、すべての群の中でアスタキサンチン添加マウスが最も長い時間運動していました。運動継続時間が長いということは筋の疲労や損傷が軽度であるということです。以上より、ペットの散歩などの有酸素運動には、アスタキサンチンは大変有用な抗酸化物質であるといえます。
9月に入り朝方は少し涼しさを感じるようにもなりました。夏の間、熱中症予防として外出できなかったペットは少なくないと思います。そろそろ運動不足の解消、肥満の予防のための準備を考える頃合いです。その時の一助として「海のカロテン」アスタキサンチンを含んだ食材をフードに取り入れるのも良いアイデアでしょう。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。