ペットとの生活に関する記事

【獣医師が解説】ペットの病気編:テーマ「ジェネリック医薬品のイメージ」

物価の上昇に伴ってペットの医療関係費(診療費、保険料他)も年々上がってきています。この費用を少しでも抑えるために、医療費の中の薬代を削減する目的で拡がりつつあるのがジェネリック医薬品の利用です。

【患者が持つイメージ】

新薬(先発医薬品)の特許期間(20~25年間)が終了した後、同じ有効成分を使って改良された薬をジェネリック医薬品(後発医薬品)と呼びます。ジェネリック医薬品も国の承認を受けており有効性・安全性に問題はありませんが、先発医薬品と比べ開発費は大きくカットされるため、その分低価格で販売されます。

ジェネリック医薬品の認識

テレビCMで身近になったジェネリック医薬品という言葉ですが、皆さんはどういうものかご存知でしょうか?東京都福祉保健局が都内在住の患者/保険者、薬剤師、医師を対象にジェネリック医薬品に関するアンケート調査を実施しました(令和2年)。

まず患者/保険者の96.4%はジェネリック医薬品を知っていると答えています。そしてその内容として最も多かったものは「先発医薬品と比べて薬の金額が安い」92.9%、次いで「先発医薬品と効き目が同じ」63.7%となっています。

ここでちょっと気になるのが「国で承認された薬」という回答率が51.8%と低いことです。冒頭でも述べましたが、先発医薬品と同様にジェネリック医薬品も製造基準など国の許可・承認を得ており、有効性と安全性は確認されています。

薬代の削減効果

ジェネリック医薬品=薬代が安くなる、というイメージができつつあります。今回のアンケートによると、ジェネリック医薬品の使用実績は患者全体の91.9%と高く、幅広く受け入れられているようです。

またジェネリック医薬品を使用して良かったと感じた点は「窓口での支払い金額が減った」が68.2%でトップ、次で「わからない」17.7%となっています。また同じく少数意見ですが「良いと感じない」8.3%という回答もありました。これら目立った良い点がわからない/感じないというのは、ジェネリック医薬品が元の先発医薬品と同等であるという評価とも受け取れます。

では実際、ジェネリック医薬品に切り替えることで、薬代はいくら削減されているのでしょうか?保険者77人のデータで見てみると、1人あたり「1,000円以上3,000円未満」が最も多く半数の50.6%でした。全体の中央値は1,935円であり、おおよそ2,000円の切替効果があるという結果でした。

【患者の声】

ここまで見た範囲では良いことずくめの感があるジェネリック医薬品ですが、何か気になる点はないのでしょうか。ここからは患者、薬剤師、医師、それぞれの立場から見たジェネリック医薬品の普及のヒントを確認します。

使用を申し出ない理由

ジェネリック医薬品の使用に際し、自ら申し出た経験があると答えた患者の割合は46.0%です。全体の半分以上の患者はあまり積極的に利用しようとしていないわけですが、アンケートではその理由を尋ねています。

患者がジェネリック医薬品の使用を申し出ない最も多い理由は「医師・薬局の判断に任せているから」34.3%です。私たち一般人が医師の治療方針に口出しするのは…といった昔ながらの考え方が根強いのでしょう(現在は患者と医師は対等な関係であり、納得いくまで意見交換をするのは正しいことです)。

ここで注目すべきは「使用を希望しない」とする意見が19.2%あることです。これはジェネリック医薬品に対する不透明さが背景にあります。すなわち価格が安い=効き目が弱い?とか、聞いたことがないジェネリックメーカー名=信頼できるのか?といった漠然とした不安感です。

重要視するポイント

患者がジェネリック医薬品の使用にあたり、重要と考える点は何でしょうか?回答のトップ3は「効果が先発医薬品と同じであること」81.7%。次に「窓口で支払う薬代が安くなること」62.6%、そして「副作用の不安が少ないこと」41.6%となっています。

私たち患者がジェネリック医薬品への理解を深めるためには、有効性・安全性・価格の3つに対する情報提供がもっと必要であると考えられます。

【ジェネリック医薬品に対する不安】

今回のアンケート結果によると、患者の約34%はジェネリック医薬品の使用など薬に関しては医師・薬剤師に任せています。では実際に薬を処方する医師や提供する薬剤師の皆さんはジェネリック医薬品に対して何か不安点をもっていないのでしょうか?

薬剤師の意見

薬局で働く薬剤師へのアンケートでは、ジェネリック医薬品に対して何かしら不安があると答えた割合は27.4%、どちらともいえない46.1%、不安はない26.5%となっています。ここでの注目点は回答した薬剤師の3割近くが感じている不安の内容ですが、そのトップは「添加物の違い対する不安」51.7%です。

薬は主成分(有効成分)と添加物からできています。ここでいう添加物とは主成分の劣化を抑える働きや、錠剤にする時の固め剤などとして使用されているものです。

ジェネリック医薬品では主成分は先発医薬品と同じものが使用されますが、添加物を変更し甘く飲みやすくするなど改良が行われています。もちろんこの添加物も含めて薬の安全性は確認されているわけですが、薬剤師のみなさんはこの点に若干の不安を感じでいるということです。
 

医師の意見

では患者を診断し、治療薬を処方する医師はどう見ているのでしょうか。ジェネリック医薬品に不安を感じると答えた医師の割合は31.0%であり、先程の薬剤師の結果とほぼ同等でした。そしてその不安の内容も同じく「添加物の違いに対する不安」65.4%がトップ、次いで「先発医薬品との効果の違いに対する不安」58.7%、「先発医薬品との副作用の違いに対する不安」45.8%となっています。

医師へのアンケートで示された「副作用の違い」は「添加物の違い」に起因するものと考えられます。ジェネリック医薬品に使用される添加物の中には、アレルギーを引き起こす可能性がある物質も採用されている場合があるためです。

今回はペット用ジェネリック医薬品について考える準備として、ヒトのジェネリック医薬品に関するイメージを紹介しました。また実際に薬代の削減という点では良い結果が得られていることが判りました。

今後ジェネリック医薬品を広く普及させるためには、長所・短所に係わらず広く情報を開示することが重要と考えられます。いよいよ次回はペット向けのジェネリック医薬品に関するオーナーの皆さんの意識についてお知らせします。

(以上)

執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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