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【獣医師が解説】ペットの栄養編:テーマ「キノコに求めるもの」

夏真っ盛りの中、皆さん自身とペットの体調管理はしっかりできていますか? 8月もお盆を過ぎると朝夕は少し暑さが和らぐ…、というのはもう昔の話です。連日の暑さで食欲は低下していますが、9月以降ぐっと出回る食材があります。それがキノコです。

【キノコを食べていますか?】

キノコといえば秋のイメージがあります。しかしスーパーに入ってみるとシメジやエノキは年中並んでいるような気がします。実際、私たちはどの季節にキノコをよく食べているのでしょうか。

月別生産量

東京都中央卸売市場の令和4年のデータによると、生シイタケの年間市場入荷量のピークは1月の約750トンです。これが2月3月と徐々に低下し、1年間で最も少なくなるのが真夏の8月です。そして9月から12月にかけて再び増え出します。
 
近頃のキノコは工場で栽培されています。年中食卓メニューに登場してもおかしくないのですが、やはりキノコといえばシチューや鍋の定番食材ですので秋~冬に生産量がアップするということです。

キノコを食べる習慣

キノコの消費と食習慣を調査した報告があります(村松芳多子ら 千葉県立衛生短期大学 2004年)。大学で食品学や栄養学を学んでいる学生32人と調理を担当しているその家族32人を対象に調査した結果、「キノコが好き/とても好き」と回答した割合は約89%でした。

そして好きなキノコのTop3では学生、家族ともに第1位:シイタケ、第2位:ブナシメジ、第3位:マイタケという答えでした。キノコは私たちにとって身近で人気の食材です。

私たちはどれくらいの頻度でキノコを食べているのでしょう。アンケートでは「週に1回以上食べている」という回答がもっと多く7割以上ありました。マツタケはさておき、一般食材であるシイタケ/シメジなどはごく普通に食事メニューに使われているようです。

このアンケートが実施されたのは9月です。消費が底をついた夏でさえ週1回以上は食べているという回答ですので、これが真冬の調査であった場合、消費頻度はもっと高くなっていたと考えられます。

【キノコの魅力】

肉や魚と比べるとキノコにはタンパク質といった主要な栄養分は含まれていません。たとえスーパーの売り場から少しの間消えたとしても、大騒ぎになることはないでしょう。私たちは何に魅力を感じてキノコを食べているのでしょうか?

キノコを買う理由

先ほどの大学でのアンケートの続きを見てみましょう。「キノコを購入する理由は何ですか?」という問いに対する上位3つの回答は、美味しいから(85.9%)、食物繊維が豊富だから(45.3%)、低カロリーだから(42.2%)でした。

キノコの美味しさの正体はグアニル酸という物質です。このグアニル酸は
グルタミン酸(コンブ、トマト)やイノシン酸(肉、魚)と並んで3大うま味成分と呼ばれています。この美味しさの次に選ばれた理由が食物繊維と低カロリーです。どうやらキノコの魅力は栄養価というより味や健康機能といったもののようです。

キノコの食物繊維

キノコを食べていると独特の食感から食物繊維の存在を感じます。3種の人気キノコ100g中に含まれる食物繊維量はシイタケ(4.9g)、ブナシメジ(3.0g)、マイタケ(4.3g)です。食物繊維たっぷり野菜の代表としてキャベツは1.8gですので、およそ2倍の量が含まれているとは驚きです。

またエネルギー量でも3種のキノコは22~26kcal、キャベツは21kcalです。美味しさもさることながら、低カロリー、高食物繊維食材として私たちの健康を応援してくれる点がキノコの魅力ということでした。(日本食品標準成分表 八訂)。

食物繊維摂取量

食物繊維は腸内環境を整える栄養素として広く認知されています。私たち日本人は1人1日あたり18.4gの食物繊維を摂っています。内訳は穀類(35.9%)、野菜類(28.3%)、イモ類(7.6%)の順になっており、その内キノコ類は3.8%しかありません。

また1人1日あたりの野菜類摂取量は269.8gであるのに対し、キノコ類は16.6gです。野菜類の2倍もの食物繊維を含むキノコ類ですが、実際に食べている量はとても少ないことが判ります(国民健康・栄養調査 令和元年)。

【これからのキノコ】

皆さんは「霊芝(れいし)」というキノコをご存知でしょうか?霊芝は漢方薬の1つで、とても高価で健康に良いという話を聞きます。太陽の下で栽培される野菜と比べると、キノコは山の中でこっそりと生えていて、何かしら不思議な健康機能をもっているといったイメージがあります。

キノコを食べる目的

健康増進に関する講演会に参加した一般人1,014人と医療系の大学生51人を対象にしたアンケートがあり、その中で「あなたがキノコを食べる目的は何ですか?」と質問しています。回答率が最も高かったのはもちろん食品・食材(89.8%)ですが、この他に病気予防(31.3%)、便秘予防(8.1%)、ダイエット(5.0%)、美容(4.1%)、病気治療(3.0%)とありました。

またこれを男女別で見てみると、食品・食材以外は女性の回答率の方が高いという結果でした。女性はキノコと健康との関係を強く意識していることが判ります(関根加納子ら 高崎健康福祉大学 2011年)。

新しくキノコに求めるもの

では最後に新しくキノコに求めるものについて確認しましょう。アンケートの質問「あなたが開発を期待するキノコは何ですか?」に対しては、美味しいキノコ(65.2%)、低価格なキノコ(25.2%)を抑えてトップは機能性のあるキノコ(68.2%)でした。

なお、このキノコに機能性を求めるという回答は、女性よりも男性の方が高い結果でした。男性は便秘予防やダイエットという食物繊維の作用よりも、血糖値やコレステロール値などの生活習慣病対策をキノコに求めているのかもしれません。

今回確認したとおりキノコは食物繊維を豊富に含む食材です。肉や魚と比べてキノコは消化しにくいため、よく噛んで食べる必要がありますが、これはペットにもいえることです。ペットは意識的によく噛むという事はできないため、手作りフードの食材にキノコを使う際は細かくカットして調理しましょう。

次回はキノコがもつ健康機能としての抗酸化作用について情報提供を行います。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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