愛犬のおやつ選びをするとき、飼い主であるあなたは何を基準に選びますか?
安心できて安全なものを選んであげたいと思う気持ちは、愛犬の健康を気遣う飼い主さんのやさしい思いやりのあらわれです。
主食はもちろんのこと、おやつ選びは、愛犬を育てていくうえでの大切なアイテム。あるときは「コミュニケーション」のツールとして、またあるときは「しつけ」のツールとしての役割を果たしています。
動物病院、ペットショップ、ドラッグストア、そしてネットショップなどでも、たくさんのおやつ商品が次から次へと販売されていて、その中から愛犬のためのおやつを選ぶとなると……選択肢が多すぎて迷ってしまうことでしょう。
- どんなおやつを選んだらいいの?
- おやつって本当に必要なの?
- どのタイミングでどのくらい与えたらいいの?
- おやつの効果的な与え方ってあるの?
こんな素朴な疑問を持たれた方も多いはず!
まずは、その疑問をいっしょに考えていきましょう。
~飼い主さんの喜びが愛犬の喜びへ、愛犬の喜びが健康へとつながっていきますように~
目次
やっぱりおやつは国産がいいの?
市販のおやつには、中国産、タイ産などが多けれど大丈夫?
愛犬が口にするものは、できるかぎり安全で安心なものをあげたい……
それは、愛犬に対する大切な思いです。
過去の事例では、2007年、中国産のペットフード(チキンジャーキーなど)がアメリカに輸入され、それを摂取した犬が大量に死んでしまったという痛ましい事件がありました。
ペットフードに含まれていた有機化合物の「メラミン」が主な原因とされ、その物質が腎不全を招き死に至らしめたのです。
「価格が安いから」「喜んで食べているから」「知名度のある商品だから」という単純な選択肢は、本当に安心と安全を保障してくれるのでしょうか。
飼い主さんの意識の持ち方が愛犬の健康を守り維持することへと繋がっていくのです。
さあ、「おやつ選び」の第一歩! 商品を知ることから始めましょう。
どこの国のものが安全なの?
古くから日本とヨーロッパ諸国などでは、犬に対する意識が違っています。
日本では、不審者の侵入を防いだり、また、農作物を荒らす天敵を追い払ったりする「番犬」という役割を担っていたため、戸外での飼育が主でした。
しかし、ヨーロッパなどの歴史を見れば、犬は狩猟の際に獲物を追跡、獲得するという大切な役割を担い、人間との関係性においては大切な「パートナー」として家族のように扱われてきました。
こうした関係が根底にあるヨーロッパ諸国では、犬にきちんとした社会的地位を確立させています。
そうした意識の違いを感じさせる表現のひとつとして、犬に「餌」を与える…という言葉がよく使われますが、ヨーロッパなどでは「食事」を与える…という表現が一般的です。
この表現ひとつをとってみても、欧米の人たちの愛犬に対する差を感じます。近年、日本でも愛犬に対する意識の高さが増し、「番犬」から「家族の一員」という認識が、飼い主はもとより社会に浸透しつつあることはたいへん喜ばしい傾向といえるでしょう。
だからこそ、愛犬には、安心かつ安全な食事を与えたいと考えるのです。
そういう観点から外国産で比較的安全とされているのは、カナダ・アメリカ・オーストラリア・ヨーロッパ・モンゴル産などです。
日本でもこだわりの国産おやつを販売しているショップも増えたとはいえ、まだまだ安易におやつ選びをしてしまうのも事実です。
購入する際には、商品ラベルなどに記載されている原産国や原材料、添加物などの表記にも注意を払いながら愛犬のおやつ選びをしたいものです。
材料には何が使われているの?
このような素朴な疑問を持つことが、実はとても大切なことなのです。
商品の原材料や成分表示の記載をチェックしてみましょう。
添加物として「防腐剤」「保存料」「着色料」「香料」などは表示されていませんか?
「塩分」はどうでしょう?合成された味付けを疑うような成分はありませんか?
愛犬は、カラフルな色彩、カワイイ形、味付けなどを見極めて好んで食べているわけではありません。
飼い主の主観でそのようなおやつを選んでいるのです。それらの添加物は回数を重ね摂取すれば、腎臓、膵臓に大きな影響を与え、健康を害することでしょう。大切な愛犬を守ってあげられるのは、飼い主であるあなたなのです! たかがおやつと軽く考えず、まずは「おやつ」の見直しをしてみませんか。
ここでは「とりささみ」を使ったおやつの比較をしてみましょう。
A社 (知名度の高いメーカー) | B社 (無添加商品を扱うショップ) | |
---|---|---|
商品名 | やわらか細切りササミ プレーン | とりささみ細切り |
原産国 | 日本 | 日本 |
原材料 | 鶏肉(胸肉、ササミ)、でん粉類、ソルビトール、グリセリンph調整剤、ミネラル類(ナトリウム)、リン酸塩(Na)、調味料 | とりささみ |
栄養成分 |
粗タンパク質・・・10.0%以上 粗脂肪・・・4.0%以上 粗繊維・・・2.0%以下 粗灰分・・・3.0%以下 水分・・・30.0%以下 |
粗たんぱく質77.0%以上 粗脂肪2.3%以上 粗繊維0.1%以下 粗灰分3.8%以下 水分16.0%以下 カロリー332cal/100gあたり ※高タンパク・低脂肪・ビタミンA B1 B2 |
硬さ | 手で折れる・ちぎれる | 手で折れる・ちぎれる |
容量 | 320g | 400g |
価格 | 594円(税込)【ネットでの販売価格】 | 2,667円(税込)【ネットでの販売価格】 |
上記の表を比較してみましょう。「ササミ」と商品名にはありますが、原材料をみるとA社ではササミ以外に「胸肉」が含まれていることがわかります。一方のB社の原材料は「とりささみ」のみとなっています。
さらに、原材料に注目をしてみますと、A社には鶏肉以外の何やらカタカナ表記が数多く見られることに気づかれるはずです。これらは添加物と言われているものです。例えば「ソルビトール」を例にあげてみましょう。
「ソルビトール(ソルビット)」は、食品添加物の中で最も幅広く使用されているあまみ成分「甘味料」です。
また、細菌を抑える「保存料」としても使われています。一度にたくさんのソルビートを摂取するとお腹がゆるくなったり下痢を起こしやすくなったりします。
原料はトウモロコシやじゃがいものデンプンを元につくられていて危険性を感じられないかもしれませんが、遺伝子組み換えの問題が指摘されています。
また、全輸入量の約6割が中国から輸入されていることにも、やはり不安を抱かずにはいられない要素かもしれません。
そして、もうひとつ注目してみると栄養成分の中に「調味料」という記載があります。
いったいどのような味付けをしているのかは、この表記からは測り知ることはできませんが、おやつの味付けは本来、必要が無いものなのです。
このような点から考えると、大切な愛犬にどのようなものを与えることが、飼い主さんと愛犬の喜びにつながってゆくのかを実感していただけることでしょう。
価格の比較をすれば「なるべく安くてすむものを…」と選びがちですが「愛情」は人間も犬も同じ。「命を守り育むこと」にあるのです。
家族が元気であることが私たちの喜びであるように、家族の一員である大切な愛犬が元気な姿でともに暮らしてゆける日々の積み重ねが、飼い主さんと愛犬の喜びのように思います。
犬におやつは必要?
ドッグフード以外与えたらダメなの? 健康に悪い? 愛犬が喜ぶならあげたい……。
「おやつは別腹!」……
などと、このような言葉をよく耳にします。
食事で十分にお腹が満たされていても、おやつは「楽しみ」や「喜び」という感情をかきたて、また「おいしい」「うれしい」という満足感を私たち人間に与えてくれます。
では、犬はどうでしょう? 私たちと同じような感情や満足感を求めておやつを食べているのでしょうか。
さあ、ここでは愛犬のおやつについて考えていきましょう。
「主食(ドッグフード)」と「おやつ」の違いって何?
「ごはん」と称される「総合栄養食」で、毎日食べるものが主食です。
「ドッグフード」は、筋肉を作るタンパク質や身体の機能を支え補助するビタミンなど健康な体を作るための栄養バランスを考えて作られています。
一方、主食以外の間食として一時的に用いるものが「おやつ」です。
ジャーキーやガム、ゼリー、クッキー、果物などがあります。
主食でしっかりと栄養が満たされていれば、「おやつ」の必要性は本来ないはずです。
では、なぜ、おやつはたくさん製造され購入されているのでしょう。
おやつの効果って何?
おやつはごはんと違って少量を与えるものです。
おやつを与えると犬が喜ぶからと、おやつの量や回数が増えてしまって主食を食べなくなっていませんか?
――栄養の偏りが心配ですね。
しっかり主食を食べているのに、過度におやつを与えていませんか?
――カロリーオーバーを招き肥満や病気が心配ですね。
これらは目に見えないところで、愛犬の健康を損ねる可能性を秘めています。
そもそもおやつを与える行為は、愛犬と飼い主さんのコミュニケーションの手段のひとつであったり、しつけのための効果的なツールだったりするのです。
例えば「しつけ(訓練)」をする際、飼い主さんが指示を出すと、初めはなかなかうまくできなかったことも、何度も繰り返しをする中で、犬は次第に覚えてできるようになっていきます。
指示をする → 指示通りに愛犬が行動する → 褒めてやる(頭や体を撫でる。ことばをかける。おやつを与える。)
犬はその繰り返しを学習していく中で、行動の正しさや褒められる喜びを知るのです。
犬が指示通りできるようになると飼い主さんも嬉しいように、飼い主さんが喜ぶと犬も嬉しいのです。
双方の気持ちがまるでキャッチボールのように行き交うことで、コミュニケーションが取れ深い絆となっていきます。
しかし、「しつけ」が楽しいからと「お座り、お手、伏せ」などを過度にさせるのはどうでしょう。
おやつを与えると犬が喜ぶからついついあげたくなるというのも、あまり感心できません。
ご褒美だからと過剰な量を与えたり、犬が喜ぶからとおやつの回数を増やしたりするそのような間違った習慣を飼い主が知らず知らずのうちに付けてしまうと
「褒められる イコール おやつがもらえる」
という悪い習慣が身についてしまいます。
文頭にも記しましたが、給与量や回数が増えることは、愛犬の健康には決して良いことではありません。
では、どのようにおやつを与えればよいのでしょうか。次の項目でいっしょに考えていきましょう。
おやつは何歳からあげていいの?
市販のおやつに「子犬には与えないように」という記載が多く、いったいいつから与えたらいいの?
人間の生まれたての赤ちゃんに固形の食べ物を与えるでしょうか?
答えは「No!」ですね。赤ちゃんは生後4,5ヶ月まではお母さんの母乳や人工のミルクだけを飲んで育ちます。
そして、月齢が増してくると、いよいよ離乳食が始まります。
犬も同じです。生後間もない赤ちゃん犬は、母乳やミルクを飲み、月齢とともに離乳食がはじまり、ドッグフードへと移行していきます。
あくまでも主食がメインですので、おやつを与えることが中心になってしまわないようにしましょう。
最初にあげるおやつは何がいいの?
一般的に用いるおやつとしては、「ボーロ」です。この場合、注意しなくてはいけないのは、「無添加」「味付け無し」「消化がよい」ということが前提です。
ボーロは口の中に入れると唾液で溶けます。喉を詰まらせるというリスクもほぼありません。もし、ひと粒が大きければ半分に割って与えて あげるといいですね。あげる量は1粒で十分です。
「フルーツ」もこの頃から与えても良いおやつです。「リンゴ、バナナ、スイカ、イチゴ、モモ」などは犬に適した果物です。喉の渇きを潤すのにも水分の多い果物は適しています。
しかし、これもほんのひとかけらで十分です。喜んで食べているからといって次から次へとあげるとおやつの味を覚えてしまい主食を食べなくなってしまいます。
また、おやつの給与量は、主食の10%以内が目安です。主食の量(カロリー)をオーバーするようなおやつの与え方は、肥満はもちろんですが健康面での心配事を招きますので気をつけましょう。
「ジャーキー」「ガム」をあげてもいいの?
「無添加おやつ」や消化酵素をたっぷり含んだ「フルーツ」などの食べものは、短時間で消化されるため体に負担をかけません。
しかし、加熱乾燥した肉は、完全に消化分解することがむずかしのです。肉に含まれるタンパク質は、筋肉や皮膚、血液などを作るのに大きな役割を果たしています。
良質なタンパク質にはアミノ酸が豊富に含まれているのですが、乾燥肉は、タンパク質が変性されてしまいます。
そのため、アミノ酸レベルまで分解できないままのタンパク質は、アレルギーや涙やけなどの健康トラブルを引き起こす一因を作ってしまうのです。
ジャーキー、ガムなどは、噛み応えがある分、消化しにくいのが特徴です。子犬のころは消化機能が未熟なため、10ヶ月頃までは与えないほうがよいでしょう。
また、喉を詰まらせたり、丸のみしたジャーキーやガムがなかなか消化されずに胃壁や腸壁を傷つけたりすることもあり、最悪の場合には死に至ることがありますから与える際には注意が必要ですね。
体を作る大切な時期に子犬におやつを与えると、その味に慣れ親しんでしまい主食を食べなくなる場合があります。
その結果、栄養のバランスを崩し病気を招くという悪循環のパターンを作ってしまうのです。
「何がなんでもおやつをあげなくてはいけない」という観念にとらわれる必要はありません。
しつけのご褒美として与えたい場合は、主食のフードの給与量から取り分けて少し与えるということもひとつの案です。
また、生肉を軽くボイルした手作りのおやつは、ジャーキーや乾燥肉よりも自然の栄養素も残っているので消化にやさしく安心です。
馬肉、鶏肉、ラム肉などはネット通販で購入することができます。これらはブロック肉などのかたまりを必要に応じて切り分けて使うこともできるので便利です。
おやつの与え方で悩んだときは、このような方法もあることを知っていただいて、ぜひアプローチしてみてくださいね。
さあ、ではおやつを上手に使い「しつけ」や「ご褒美」に、どう活かせればいいのでしょう。
次の項目でさらにいっしょに考えていきましょう。
しつけ、ご褒美としておやつを上手につかう方法
ご褒美でおやつをあげるはダメなの?
前項の「犬におやつは必要?」のところで「褒める イコール おやつを与える」というのは、あまり感心できたことではないとお伝えしました。
おやつの役割は、「正しい」ことを教えるためのしつけの手段のひとつです。しつけができていないのにおやつを与えてしまったり、カワイイという単純な理由からついついあげる回数が増えてしまったり……その結果、おやつが無いと飼い主さんのいうことを聞かないわがままな犬になってしまったということは起こり得ることです。
こうした知恵をつけてしまうことは、やはり間違ったおやつの使い方といえるでしょう。
どのようなときにおやつをあげればいいの?
愛犬が正しい行動をしたときは、「よくできたね!」「えらかったよ!」「いい子だねえ!」とことばをかけてあげましょう。
そして、声がけをしながらスキンシップをすることが、褒める側、褒められる側の本来の喜びのように思います。犬は頭や体を撫でられ褒められることが大好きなのです。
正しい行動は褒められる → 褒められたら嬉しい → また褒められたい
この繰り返しがしつけの近道なのです。
さあ、ここでおやつを効果的に使いましょう。
ご褒美におやつを与える場合は、一度にたくさんあげるのではなくて、正しい行動ができたことを認め褒める場面で与えること。
例えばしつけの場面で「お座り」を教え込むとしましょう。お座りができていないのに、「お座り」と、号令をかけるたびにおやつを与えても効果は望めません。何度も行動を繰り返し、正しいことができたときの褒美のひとつとして効果的におやつを与えます。
繰り返しのしつけの中で、飼い主さんから褒められたことを犬は覚えていきます。やがてそれがしっかりとできるようになるとおやつが与えられます。
「わぁ~、こんなにおいしいものをもらえたぁ~ やったぁ~」
と、尻尾を振り、飛び跳ねて喜びを表現することでしょう。
「よ~し、次もやるぞぉ~」
とばかりに、またおいしいおやつをもらいたいと頑張るきっかけ作りになります。
そのためにも一度にドッサリ与えるのではなく、小さくちぎったり、さいたりして回数を増やして与えるとよいでしょう。そのような繰り返しの行動学習が、定着したしつけへとつながっていき、飼い主さんと愛犬との信頼関係もより深く築かれていくのです。
褒める回数が増えることは、飼い主さんと愛犬にとっては嬉しいことです。それはわたしたち人間も同じです。努力をして成し遂げた成果を認められ褒められる回数が多ければ多いほど喜びは大きいものです。
こうした素朴な疑問の数々から、おやつ選びの大切さを知っていただき、安心、安全なおやつ選びが、愛犬の食育を考えるきっかけになっていただければと願っています。
愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。