骨格とは
「骨格」とは、「関節」で結合した複数の「骨」および「軟骨」によって形成される(形づくられた)構造のことです。
わかりやすく言えば、身体の「骨ぐみ」です。
実は、愛犬の健康管理を行う上で、犬の骨格について知っておくことには、とても重要な意味があります。
しかしながら、(筋肉や皮膚で覆われているため、)私たちが直接に目にする機会はほとんどなく、日ごろは、意識することも少ないと思います。
犬の骨格の特徴
骨の数
皆さんは、ご自身の身体の中に、どれくらいの数の骨があるかをご存知でしょうか。
私たちヒトの骨格は、200余の骨からできていると言われています。
では、犬の骨格は、どれくらいの数の骨からできていると思われますか。
「ヒトが〝四つんばい〟になれば、犬と似た状態になりそうだし・・・。」、「いやいや、犬の方が身体の大きさも小さいし・・・。」と、考える方も多いのではないでしょうか。
犬の骨格を形成する骨の数は、犬種によって若干異なりますが、平均すると320前後の骨からできていると言われています。
なんと、ヒトの約1.5倍です。
その分、犬の骨格は、ヒトと比べて全体的に細いつくりとなっており、事故による骨折や脱臼を起こしやすい身体構造になっています。
骨格の形成期間
犬の骨格が成犬のサイズまで成長する期間は、小型犬で8~10か月、中型犬で10~12か月、大型犬で15~18か月と、とても短いのです。
ヒトの骨格が完全に形成されるまでには15~18年かかるので、ドッグイヤーどころの話ではない驚きの早さです。
骨格の構造
更に、違いは、これだけではありません。
犬の骨格の構造は、その動作や行動とも関係しています。
たとえば、犬は、ヒトのように肩をぐるぐる回すことはできず、前足を前に振り出したり後方に引き寄せたりするという動きをします。
これは、四足歩行に順応するため、肩関節を形成している肩甲骨(けんこうこつ)と上腕骨(じょうわんこつ)の骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)と筋肉が強靭(きょうじん)にできているためです。
また、犬は、食べものを十分に噛まずに飲み込んでしまいます。
これは、顎(あご)の関節を左右に動かすことができず、口の中のエサをモグモグとすり潰すことができないためです。
このほかにも、犬特有のさまざまな動作や行動が骨格の構造に起因しています。
そして、身体の外観や内臓の機能とも密接に関わっています。
犬種による違い
本来、犬の骨格には、オオカミの骨格と類似した特徴があります。
獲物を追跡するための走りやすいまっすぐな四肢の骨を持ち、獲物との距離を把握しやすいように眼窩(がんか=目玉の穴)が前を向いているという特徴です。
しかしながら、品種改良の歴史の中で、遺伝学的には骨の形成異常が正統な犬種標準として認定されている犬種も少なくありません。
たとえば、短足系のダックスフンドやコーギー、頭部が短吻(たんぷん)のペキニーズ、そして、らせん状に巻いたしっぽが可愛いボストン・テリアやブルドッグなどです。
これらの遺伝性の要因が、成育環境や肥満などによって、骨や関節の病気を発症するきっかけとなる場合もあります。
関節の役割り
関節の主な機能は、次の2つです。
- 動きの支点となり、力を伝えている。
- 力が伝わる角度と方向をコントロールしている。
関節は、強い帯状(おびじょう)の線維(体内の細い組織)の束でできていて、骨と骨とをつないでいます。
骨と骨があたる部分にはやわらかな軟骨があり、そのまわりは丈夫な袋(関節包)で包まれています。
袋の内面は滑らかな膜でおおわれており、その膜からは潤滑油のように滑らかな液が分泌されて、関節の滑りをよくしています。
関節には、それぞれ可動範囲があって、動く角度と方向が決まっています。
骨の役割り
骨は、〈支持作用〉〈保護作用〉〈運動作用〉〈造血作用〉〈貯蔵作用〉という5つの大切な機能を担っています。
- 身体のさまざまな器官(頭や内臓など)の重量をささえ、梃(てこ)の原理で、身体の姿勢を保っている。〈支持作用〉
- 骨格を形成し、その空洞や空間の中で、脳、心臓や肺などの臓器、脊髄などの器官を保護している。〈保護作用〉
- 骨に付着している筋の収縮によって、関節を支点として、運動を行っている。〈運動作用〉
- 骨髄で、新しい赤血球、白血球、血小板などの血液の細胞成分を作り続けている。〈造血作用〉
- ミネラル(リン・カルシウム等)や脂肪を貯蔵し、必要に応じて、血液中に放している。〈貯蔵作用〉
このうち、特に〈造血作用〉と〈貯蔵作用〉は、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
骨に損傷を受けたり病気になると、骨が折れたり変形したりして、激しい痛みと共に発熱が続きます。
これは、〈造血作用〉と〈貯蔵作用〉に障害が出ているためだと考えられており、脳や神経の病気とも密接に関わってきます。
愛犬たちの骨と関節のトラブル
股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)
主に、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、バーニーズ・マウンテンドッグ、ジャーマン・シェパードなどの大型犬種で、生後6ヵ月から1年くらいの間に発症する場合が多い病気です。(フレンチ・ブルドッグや小型犬種での発症例もあります。)
股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)とは、「股関節寛骨臼(かんこつきゅう)の発育不全・変形、大腿骨頭(だいたいこっとう)の変形・偏平化による股関節の弛緩」のことで、骨盤(こつばん)と大腿骨(だいたいこつ)を結合している靭帯(じんたい)と関節包が伸びて脱臼しやすい状態を言います。
関節の間の軟骨部分の擦り減りなどにより痛みを伴うため、歩みが緩和になり、運動することを嫌がるようになります。
往年の銀幕のスター、マリリンモンローのような腰振りスタイルの歩行になっていたり、または横座りばかりをするようになっているのに気がついたら、要注意です。
原因として、遺伝性の要因が影響していることまではわかっていますが、それだけではなく、諸説の原因が考えられていますが、明確にはなっていません。
遺伝性の要因については、あるレトリバー種の血統が淘汰されてきたことによって、発症率の低下につながってきています。
痛みが強いときには、股関節に負担のかかる過度の運動を避け安静に過ごし、痛みが緩和されてきたら、毎日の散歩を続けましょう。
股関節の負担を軽減するためには、ダイエットが有効な場合もあります。
膝蓋骨脱臼症候群(しつがいこつだっきゅうしょうこうぐん)
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)は、膝蓋骨が大腿骨滑車(だいたいこつかっしゃ)という部分から脱落し、膝関節の機能障害を生じている病気です。
膝蓋骨とは、俗に言う「ひざのお皿」のことです。これは、アーモンド状の一つの遊離した骨として認められており、膝を伸ばしたり曲げたりするときに働く靭帯を、ずらさずにスムーズに動くようにしています。
実際には大腿四頭筋、そして膝蓋靭帯という軟部組織と共に膝関節を伸ばす運動を行っています。
発症率が高いのは、膝のお皿が内側にずれる「内方脱臼(ないほうだっきゅう)」です。これは、主に、ポメラニアン、チワワ、プードル、マルチーズ、テリアなどの脚が華奢(きゃしゃ)な犬種で、生後4から5ヵ月ごろに症状が出始めて、成長段階で症状が顕著(けんちょ)となり、または、成犬になってから突然に発症する場合もある病気です。
一方、膝のお皿が外側にずれる「外方脱臼(がいほうだっきゅう)」は、まれに大型犬種に発症します。
いずれも原因は解明されておらず、進行の予測も難しい状況です。
初期には無症状ですが、片脚に症状が出始めるとスキップのような歩行をしたり、両脚に症状が出始めると腰をかがめた姿勢で歩行するようになったりします。
特に、トイ犬種(=もともと他の犬種の犬たちを小型化して作られてきた犬種)の膝蓋骨は米粒ほどの大きさしかなく、飼い主が触って判断するのは難しいため、生後4から5ヵ月以降は、要注意です。
「ヒザが緩い」と診断された場合でも、運動過多にならない程度に毎日の散歩を続けて、足腰の発育を支持しましょう。
関節リュウマチ(かんせつりゅうまち)
主に、ミニチュア・ダックスフンド、チワワ、トイ・プードルなどの小型犬種で、5から6歳ごろに発症する確率が高い病気です。
初期症状では、発熱して、ぐったりと元気がなくなって食欲も低下し、痛みも伴います。
ゆっくりと進行し、末期には寝たきりになってしまうこともある恐い病気の一つです。
単体で診断を確定させることのできる検査はなく、治療方法も確立されておらず、ステロイドホルモン剤の投与などによって進行を止めるしかない状況です。
一度破壊された関節構造は、回復しません。
日頃から愛犬の行動などを観察しておき、早期発見につなげて悪化を食い止めることが大切です。
この病気は、免疫のしくみに狂いが生じて、自分自身の体の細胞に対して攻撃をし、関節炎を起こしてしまう「免疫介在関節炎(めんえきかいざいかんせつえん)」の一つに分類されます。
その発症のメカニズムは解明されていませんが、ウィルスの感染により遺伝子が傷つけられ病気を発症したり、遺伝的要因を持っている犬が感染症やストレス、出産、ケガ、手術などを引き金に発症したり、または症状が悪化したりするのではないかとも考えられています。
普段より、免疫力を高める食べ物やストレスフリーの生活環境づくりを心掛けてあげましょう。
多発性関節炎(たはつせいかんせつえん)
この病気も、「関節リュウマチ」と同様に、「免疫介在関節炎(めんえきかいざいかんせつえん)」の一つに分類される病気です。
ただし、「関節リュウマチ」とは異なり、「関節液検査」で診断を確定させることができます。また、関節に炎症を起こすだけで機能の破壊はしないため、炎症を抑えることができれば症状は改善に向かいます。
ミニチュア・ダックスフンド、シー・ズーなどの小型犬種で、5から6歳ごろに発症する確率が高いとされています。
普段より、免疫力を高める食べ物やストレスフリーの生活環境づくりを心掛けてあげましょう。
変形性関節炎(へんけいせいかんせつえん)
どの犬種でも、長生きすれば発症する可能性の高い病気です。
主たる原因は、骨と骨の間のクッションの役割を果たしている軟骨が、老化に伴ってなめらかさを失い、脆く(もろく)なることです。
また、肥満やケガや他の病気の手術の後遺症によっては、若年齢から発症する確率も高くなります。
骨と骨との摩擦によって関節に痛みや腫れが生じ、進行すると歩行異常を発症したり、変形することもあります。ただし、犬の体重は、骨格の〈支持作用〉によって四足に分散されるため、1本の脚に痛みが生じただけでは、完全に立てなくなる心配はありません。
やはり痛みが強い間は安静にしておき、痛みが緩和されてきたら、毎日の散歩を続けましょう。
肥満犬の場合には、ダイエットも有効です。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
一般的に、骨が弱くなる症状を「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」と言います。
「骨量が減少し、骨の微細構造が障害された結果、骨折が起こりやすくなった全身性の骨の状態」と定義されています。
骨粗鬆症は、「原発性骨粗鬆症」と「続発性骨粗鬆症」の2つに分けられます。
原発性骨粗鬆症(げんぱつせいこつそしょうしょう)
「原発性骨粗鬆症」には、女性ホルモンの低下が大きく関与していると考えられています。
メスが避妊手術をすると女性ホルモンが大きく減少し、骨折のリスクが高まることは明らかです。
続発性骨粗鬆症(ぞくはつせいこつそしょうしょう)
「続発性骨粗鬆症」の原因には、糖分の取り過ぎによる低血糖症や糖尿病、ステロイド剤服用、関節リウマチなどが挙げられます。
この場合、原因疾患の改善によって劇的に改善される場合もあります。
骨の強度と改善
骨粗鬆症には、骨の機能のうち、〈貯蔵作用〉が関わっています。
特に、カルシウムの貯蔵と調節は、骨の強度と密接に関係しています。
犬の体内で、カルシウムはさまざまな働きをしています。
筋肉が収縮したり、心臓が動いたり、神経の働きや、ホルモンの分泌などにカルシウムは関わっています。
カルシウムの摂取量が少なく、カルシウム不足の状態になると、骨を溶かして必要なカルシウムを確保する仕組みになっています。
最近多くなってきている犬の骨折は、運動不足や砂糖を含んでいる甘い食べ物を食べる食生活が原因だと考えられています。
これを改善させていくためには、ライフスタイルを見なおす必要があります。
骨粗鬆症の対処法
骨粗鬆症の改善には、「運動」「日光浴」「食生活」の3つがポイントとなります。
・運動
運動はとても大切で、骨に重力を加えることで骨密度は維持されると考えられています。
骨からカルシウムが溶け出すのを防ぐためには、適度な運動が必要です。
・日光浴
犬にとって、太陽の恵みには計り知れないほどの恩恵があります。
日光浴は、ビタミンDの増加と活性に直結しています。
ビタミンDは、カルシウムの吸収率アップや筋力維持には欠かせない大切な栄養素です。
ビタミンDは食べ物から体内に取り込まれるものと、太陽の光(紫外線)を浴びることで、皮膚の内部で作られるものがあります。
体内のビタミンDを維持するためには、両方ともが重要です。
どちらか一方だけでは不足しがちで、外に散歩に連れだせない幼犬の時期に骨折が多く、散歩に行けなくなった老犬の脚が弱るのが早いのもそのためではないでしょうか?
サプリメントや食べ物からだけ多量に摂取しても、ビタミンDは不足してしまいます。
外飼いが多かった昔には、ビタミンD不足は、まずありえないことでした。
愛犬の高齢化が進む中、様々な理由で外出しない高齢犬が増えてきたことや、冬季の日照時間の少ない時期に骨折が多いことを裏づけるデータもあります。
近年、ビタミンDが栄養学で注目され、数多くの研究が進む中、さまざまな新しい発見がありました。
例えば、血中ビタミンD濃度が不足状態にある高齢犬が全体の1割以上を占めていること、血中濃度が低下すると筋肉の衰えが目立つことなどです。
たとえ1日10分でも十分です。
積極的に外に連れ出してあげるよう心がけましょう。
・食生活
何よりも大切なことは、食べ物の見直しです。
特に、砂糖を含んだ甘い食べ物を食べると、身体からカルシウムが奪われてしまいますので注意して下さい。
基本は、バランスのよい食事を心がけることです。
骨に必要な栄養素は、カルシウムだけではありません。
カルシウム以外のリン、ビタミンD、タンパク質等もバランス良くとることが大切です。
カルシウムを上手にとるための基本は、バランスのよい食事を心がけることです。
そして、腸での吸収力を高めるためには、過食にならないように注意することも重要です。
バランスの良い食事を与えることが難しい場合には、「サプリメント」を活用することも有効です。
サプリメントは(身体に優しい食品であって薬ではないので)、効き目がすぐに出るとは限りませんが、液体や微粉末化されたサプリメントであれば、吸収率は上がり、早い時期からの効き目が期待できます。
年齢とともに、骨密度が低下することは避けられません。
そのため、若いうちから生活習慣に気を配り、丈夫な骨を作ることで老犬になっても骨の質や密度が十分に維持できるようにしましょう。
椎間板ヘルニア(ついかんばんへるにあ)
「椎間板ヘルニア」は、脊髄(せきずい)の病気です。
従がって、神経の病気に分類されている場合もあります。
脊髄(せきずい)は、脊椎(せきつい)の中をとおる神経線維の束で、脳からの指示を全身に伝えたり、逆に、感覚などの情報を脳に伝える役割を果たしています。
背柱(背骨)は、脊椎を構成している一つ一つの骨が連結して形成しています。
椎間板(ついかんばん)は、この骨と骨の間に存在する円形の線維軟骨のことです。
ヘルニアとは、体内のある臓器が本来あるべき位置から脱出してしまった状態を指します。
要するに、「椎間板ヘルニア」とは、椎間板が本来ある位置から飛び出てしまい、圧迫されている状態の病気です。
この病気は発症の状況により、「ハンセン1型椎間板ヘルニア」と「ハンセン2型椎間板ヘルニア」に分類されます。
「ハンセン1型椎間板ヘルニア」は、ダックスフンド、フレンチ・ブルドッグ、アメリカン・コッカ―・スパニエル、ビーグル、シー・ズー、ペキニーズなどの「軟骨異栄養性犬種(なんこついえいようせいけんしゅ)」と呼ばれる遺伝的に発症しやすい犬種があります。
これらの犬種では、3から6歳の間に最初の発症をし、その後、繰り返し発症するたびに、重症化していく可能性が高いとされています。
発症の原因は、過度の運動などによるほか、くしゃみやしゃっくりなどの日常的な動きにも起因します。
「ハンセン2型椎間板ヘルニア」は、大型犬種の成犬や老犬で慢性的に発症し、時間の経過と共に悪化します。
どちらも、抱き上げたり、軽く背中を押したときに痛がるので、早期発見に役立ててください。
痛みが激しくなると、背中を丸め、運動を避けるようになります。
日ごろから心掛けておきたいトラブル対策
愛犬たちの骨と関節のトラブルは増加しています。
運動不足、栄養バランスの崩れ、肥満、高齢化、滑る住環境などさまざまな要因が関係しています。
愛犬の住環境には「滑り止め」対策を!
犬にとっては、クッション性の低いフローリングや畳など「滑る住環境」は、4本の足が安定せず、筋や関節に負担がかかります。
また、ソファーやベッドから飛び降りたり、うれしくてジャンプしたりと、アクティブに動きまわる中で、筋が伸びてしまったり、軟骨をすり減らしてしまったりします。
滑る住環境には、タイルマットやカーペットを敷くか、または滑り止めワックスを塗るなどの対策をしてあげることをおすすめします。
そして、滑り止め付きの靴下なども考慮してあげてください。
あなたの愛犬は、喜んでぴょんぴょんと2本足で上下運動しながら跳びついてくるしぐさをくしませんか?
実は、この上下運動の繰り返しも、足腰に負担をかけています。
特に、ダックスフンドやコーギーなどの胴長犬の場合には、要注意です。
足腰を守るためにも、しつけとして、この行動を抑制するようにしてください。
そして、ソファーやベッドにはスロープなどつけましょう。
痛みが治まっても無理は禁物
犬は痛みに強く、炎症を起こしていても、慣れてくると日常通りの動きをし始めます。骨と関節のトラブルを発症した場合、しばらくは、無理させず、お散歩時間を短くし、激しい運動は避けるようにしてあげてください。
重度の場合を除いては、痛み止めはおすすめできません。
痛み止めによって痛みが治まると、すぐに走り回ったり飛び跳ねたりして炎症を悪化させてしまう場合もあります。
一時的対処療法が、悪化の原因になる場合もあります。
炎症が治まるまでは安静にし、様子を観ながら、段階的に負担の軽い運動からはじめましょう。
肥満は大敵
毎日、継続的に適度な運動をとり入れて、強い筋肉と骨づくりを心がけましょう。
関節部の回りにはそれを支え、保護する筋肉が覆っています。
しっかり筋肉をつけ、関節への衝撃や脱臼を防げるようにしましょう。
元々、自然の中で走り回り、獲物を狩猟していた犬は、運動により強固な筋力、強い骨を保っていました。
関節は筋肉でしっかり覆われ、衝撃やズレから守っています。
毎日の適度なお散歩でしっかり筋肉をつけて、足腰を守りましょう。
土の上はクッション性も高く、関節に優しいため、お散歩コースには舗装道よりも地道を、そして、適度に傾斜のある坂道などを選びましょう。
時として、ダイエットが必要な場合もあります。
しかし、毎日の運動があってこそ、脳から強い筋肉や骨を作る指令が出て、栄養の吸収率が高まり、強い骨や筋肉を作ります。
先ずは、愛犬が肥満にならない健康的な規則正しい生活をおくることを心掛けてあげましょう。
それでも、シニア期の犬は新陳代謝も運動量も下がり、肥満になればなかなか痩せにくくなります。
肥満は関節に負担をかけるだけでなく、肺や心臓にも悪影響を及ぼします。
ドライフード選びは、良質な動物性タンパク質を多く含んだものを心掛けてください。
良質な動物性タンパク質の塊である、生肉をトッピングとしてあげるだけでも、健康的な食事にグレードアップします。
そして、サプリメントは、愛犬のお悩みの症状に特化したものを選び、食べ物と一緒に与え、経過を見守りながら続けましょう。
特に、「ラクトフェリン」をとり入れることをおすすめします。
ラクトフェリンとは、牛乳、母乳、そして涙、唾液、血液などに存在する感染防御機能を持ったタンパク質です。
最近では、内臓脂肪を減らす効果があることも発表されています。
また、抗炎症作用により、関節炎にも効果を発揮します。
食生活にも配慮
加工食品中心の食生活やおやつを与え過ぎては、栄養バランスが崩れていまいます。
丈夫で健康な骨格づくりには、バランスの良い食べ物を心がけてあげましょう。
丈夫で健康な骨格づくりに有効な栄養素
ここに列挙する栄養素とそれを多く含む食材は、それ以外のさまざまな栄養素や食材と相対的に関わり合って、健康な骨格づくりに役立っています。
また、偏った過剰摂取によって弊害をもたらす場合もありますので、必ず、栄養バランスを意識しながら参考にしましょう。
・ビタミンA
骨の健康維持に大きな役割を果たしており、同時に、粘膜を強化し病原体の侵入を防ぎます。
レバー、卵黄、ウナギ、ニンジン、カボチャ、ホウレンソウなどの食材に多く含まれています。
・ビタミンC
コラーゲンの生成に不可欠で、不足すると骨折しやすくなります。
ストレスが加わると大量に消費されるので、愛犬にはストレスフリーの生活を心掛けてあげましょう。
ブロッコリー、カボチャ、サツマイモ、青菜、ミカンなどの食材に多く含まれています。
・ビタミンD
カルシウムとリンの吸収を促し、骨に沈着させます。
特に、成長期にある愛犬の丈夫な骨づくりには欠かせません。
シラス干し、サンマ、アジ、シャケ、干しシイタケ、マイタケなどの食材に多く含まれています。
・ビタミンK
カルシウムが骨に沈着する際に必要なたんぱく質を活性化させ、骨からカルシウムが排出されるのを防いでいます。
不足すると骨が弱くなります。
ホウレンソウ、ワカメ、コマツナ、キャベツなどの食材に多く含まれています。
・ビオチン
不足すると成長障害を起こし、関節炎などを発症する場合があります。
レバー、鶏肉、卵、シャケ、イワシ、きな粉、ヨーグルト、ピーナッツなどに多く含まれています。
・カルシウム
体内にもっとも多く存在するミネラルで、骨を形成し、身体を支える重要な役割を果たしているので、不足すると骨がもろくなり、骨折しやすくなります。
煮干し、アジ、豆腐、コマツナ、ヒジキ、ワカメ、昆布、チーズなどの食材に多く含まれています。
・リン
カルシウムの次に体内に多く存在するミネラルで、健康な骨づくりには欠かせません。
接種に際しては、カルシウムとのバランスが重要です。
削り節、大豆、昆布、ヨーグルト、牛乳などの食材に多く含まれています。
・マグネシウム
体内に取り込まれたマグネシウムの半分以上は、骨格内に貯蔵されて骨を構成する成分になっています。
接種に際しては、カルシウムとのバランスが重要です。
ほうれんそう、大豆、小豆、ヒジキ、ピーナッツなどの食材に多く含まれています。
・銅
銅は多くの酵素の成分になっており、コラーゲンやたんぱく質の生成を助ける酵素となって骨を丈夫にする役割を果たしています。
レバー、シジミ、エビ、豆腐、空まめ、キノコなどの食材に多く含まれています。
・マンガン
マンガンは、補酵素として、多くの酵素を活性化することに役立っています。
骨の形成に欠かせないミネラルで、軟骨の合成に必要な酵素の成分にもなっています。
卵、シジミ、玄米、ショウガなどの食材に多く含まれています。
それでも、手術が必要になったら
最近では、関節疾患専門の獣医院もできています。
そして、手術による成功例も増えてきました。
しかしながら、骨や関節の病気の中には、いまだに明確な原因わかっていない病気も多く、外科手術の難易度が高いという状況は変わっていません。
あなたの大切な愛犬の代わりに、あなたが術後のリスクやリハビリなどについて、事前に十分な納得が得られるまで説明を受けて、慎重に検討しましょう。
「骨」と「関節」の健康管理についての知識は、病気やケガの「予防」だけではなく、「再発防止」、そして病気やケガを発症してしまった愛犬たちを含む全てのワンちゃんたちの『QOL(クオリティ・オブ・ライフ=健やかで質の高い生活を提供し、そして、そのワンちゃんらしい生活を送って、一生に幸福を見出すこと)』のヒントにもなります。ぜひ、役立ててください。
愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。