地球が誕生したのは、今からおよそ46億年前と言われています。
日本人の平均寿命が80余年ほどですから、地球の誕生から考えると私たちの一生は、瞬きほどの時間です。
さらに、人の寿命と同じく犬にもその命の限りがありますが、それは人よりも短い一生です。
だからこそ、いっしょに居られる時間を大切にしたいという飼い主さんの思いはひとしおのことでしょう。
環境を整える、食事に気を遣う、いっしょに運動する、遊ぶ・・・など、生活をともにする時間の中で、できる限りのことをしてあげたいものですね。
そんな愛犬のことを、もっとわかりたい、理解したいと思う飼い主さんのために、今回は犬のルーツについて調べてみました。
私たちヒトは、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどの類人猿から進化してきましたが、では、犬はどのような進化を遂げてきたのでしょうか。
愛犬のことを知るには、まずは犬のルーツを知ること!
それが案外、飼育のヒントになるかもしれませんよ。
では、犬のルーツを探す旅へ出発しましょう!
犬の祖先は何者?
ズバリ、オオカミです!
えっ? オオカミ?
そう、童話の『赤ずきん』や『三匹の子ブタ』『オオカミと七匹の子ヤギ』などに登場する恐くて悪者のあのオオカミです。
物語の中では、悪知恵を働かせてあの手この手で弱い者を騙したり襲ったりしますが、実際のオオカミはどうなのでしょう。
まずはオオカミの本質を探ってみましょう。
オオカミの特徴
・オオカミの派生
オオカミは北半球、北米大陸、ヨーロッパから極東、ユーラシア大陸の広範囲にわたって広く分布されて、「タイリクオオカミ」や「ハイイロオオカミ」とも呼ばれています。
「タイリクオオカミ」は、体長が100cm~160cm、体高は60cm~90cmと小さなものから大きいものまで差が見られ、体毛なども地域によってそれぞれに違いがあります。
シンリンオオカミ、ホッキョクオオカミ、ヨーロッパオオカミなどというふうに分布されていますが、これらは「タイリクオオカミ」から派生した仲間(亜種)です。
ちなみに、日本に生息していた「ニホンオオカミ」も、タイリクオオカミの仲間といわれています。
・オオカミの習性
近年の日本においては、野生のシカやイノシシが増えすぎてしまい、樹皮や高山植物の食害が問題になったり、また、エサを求めて山奥から人里近くへやって来て、農作物や田畑を荒らしたりという被害が各地で多発しています。
日本で野生のシカの頭数が増えすぎたのは、明治時代にオオカミが絶滅したことが原因のひとつと言われているのですが、これは本来、オオカミはシカを追いかけ、シカはオオカミから逃げるという狩猟の関係性があり、オオカミが幼獣、虚弱、衰態したシカなどを捕食することにより頭数を減らす役割をしていたからです。
・「オオカミの遠吠え」と「犬吠え」
昔、『狼男』という映画があったのですが、満月になると人間の姿をした男性が毛モクジャラのオオカミに変身して、崖の上などで月に向かって「ウォォォォ~」と遠吠えしているシーン。
確かに、オオカミの遠吠えを調べてみると、上を向いて吠えています。
オオカミになったつもりで顔を上向きにして「ウォ~」と声を出してみると、上向きに声を出したほうが、下を向いたときやまっすぐに顔を向けたときよりも甲高い声が長く出るような気がします。
これはなかなか面白い試みでしたので、興味のある方は一度試してみてくださいね!
遠吠えとは、仲間同士とのコミュニケーションの手段であったといわれていますから、より遠くまで声がしっかりと届くことが必要なのですね。
オオカミの遠吠えというのは、ヒトでいう指紋と同じで個体にそれぞれに違いがあり、この遠吠えを聞き分ける能力をオオカミは備えているのです。
犬では、シベリアンハスキーなども遠吠えをする犬として知られています。
しかし、たいていの犬は遠吠えではなく吠えるという動作です。
「ワンワン」と元気に吠えたり、「ウゥゥゥ~」とちょっと相手に向かって威嚇的な声を発したり、「クオォォ~ン」と、どことなく寂しそうな声をだしたりと、さまざまな鳴き声ですが、オオカミのように高い声で長々と声を出し続けるような遠吠えとは少し違いますね。
犬が吠えるときというのは、何かを怖がったり、誰か(何か)を警戒したり、拒否したり、甘えたりの行動表現と言われています。
愛犬のそういう声の発し方を観察してみるのもいいですね!
・「一匹狼」
このことばは、群れることを好まない単独のはぐれ者というイメージで比喩されます。
しかし、実はオオカミは群れ(パック)で行動する生きものです。
たいていは夫婦、それに加えて子どもという単位ですが、家族以外の個体とも群れを作ります。
オオカミは序列が厳しいため、狩りをするときもそれぞれの役割分担がしっかりしています。
獲物を追いかける、獲物を囲むという一連の流れを決めていて、それはたいてい子どもや力の弱いものが担い、とどめを刺す、獲物を分配するというのは群れのリーダーである、親の役割です。
しかし、子どもはやがて成長するとその群れから個々に独立しなくてはなりません。
群れから離れたオオカミは単独で行動し自力で生きていくすべを身に付けます。
このように独立している期間のオオカミを称して「一匹狼」という表現が使われるようになったらしいのです。
しかし、その一匹オオカミもやがてはパートナーをみつけ、家族を持ち新しいパックを築きます。
中には、他の群れの長を襲って自分がそのパックの長となることもあります。
オオカミは凶悪な動物なの?
先ほども述べましたが、物語の中のオオカミは凶悪で人や動物を襲うイメージで捉えられていますが、実はオオカミは警戒心が強くて神経質で臆病と言われていますので、イメージとはちょっとかけはなれているかもしれませんね。
日本では明治時代に絶滅してしまったオオカミですが、世界の分布を見てみると北米やヨーロッパ、アジアなど広大な地域でオオカミの生息が今も確認されています。
では、オオカミは本当に人を襲う習性を持っているものなのでしょうか。
オオカミが人を襲った例として
◇狂犬病にかかったため
◇餌付けなどで人を恐れなくなったため
◇不足した餌を求めたため
という報告がありますが、それが頻繁に起こっているわけではないということも事実です。
とかくオオカミの印象を悪く捉えがちですが、アメリカのイエローストーン国立公園では、オオカミのおかげで自然公園の環境が元に戻ったという報告もあり、オオカミの存在は決して排除されるべきものではないことが立証されている例といえるでしょう。
イエローストーン国立公園では、オオカミが絶滅したのは1978年頃と言われています。
その後、オオカミが捕食していたシカの頭数が増えすぎてしまい、シカに植物が荒らされて自然の生態系は崩れていってしまったのです。
つまり、自然の生態系というのは、動植物が共生していく中でバランスが保たれるのですが、それがひとつでも乱れてしまうと、次から次へと崩れてしまうことが、この一例からもわかります。
そこで、今から30年ほど前のイエローストーン国立公園は、シカの天敵であるオオカミを放し、再びシカの捕食が始まりました。
その結果、シカの頭数が減り、植物が甦り木々が育つようになりました。
そして、そこに鳥や虫が棲みはじめ、小動物のウサギやビーバー、ネズミなども数が増えていきました。
川にも生きものが棲みつき自然の営みが循環するようになり、公園はまるで息を吹き返したように生き生きとした森へと復活を遂げたのです。
こうしてみると、オオカミが自然界で担っている役割というのはとても大きいことがわかりますね。
自然界には、何ひとつとして無駄なものや不必要なものなどは無いのです。
それぞれの役割を持って、進化しながら生き続けてきています。
こうして考えてみると、進化は進歩でなくてはならないことを、いちばんよく知っているのは動植物であり、それを知らないのは愚かな人間なのかもしれません。
自然破壊が招く野生動物(イノシシ、シカ、野猿など)の餌の不足により人家への被害が日本各地でも起こっています。
本来山奥で暮らしているはずの野生動物たちが、餌を求めて人里に出没するというのは、今や珍しいことではありません。
住宅街に現れてすばしっこく逃げ回る野生動物たちに、人間の方が翻弄されています。
あの手この手で捕り物帖をしていますが、なかなか捕まえられない様子が映像で映し出されているのを見ると、野生動物と人間の関係、自然と生き物の関係がどのようになっていくのかという危機感を覚えます。
自然の生態系を狂わす因果関係は、物語のオオカミの怖さよりももっと恐ろしいものを生み出すかもしれないと、野生の動物たちはあえて山を下り、人里に姿を現して警鐘を鳴らしているのかもしれません。
オオカミから犬へ
では、オオカミの持つ性質や性格から、どのようにして犬へと進化していったのでしょう。
きのうはオオカミで、今日から犬に変身!というわけではありません。
それには、長い年月と進化の繰り返しが必要だったのです。
しかし、実際のところいつ、どこで、どのようにオオカミから犬へと進化していったのかは、今の段階でははっきりとした全容の解明はされていません。
ただし、オオカミが人間の残した食べものを求めて集落に近付いたことが始まりだという説があります。
また、オオカミは交雑の動物ですから、交配を繰り返していくことでより犬に近いものが誕生していったということも言われています。
では、犬の祖先オオカミとの共通点はどういうところでしょう。
・形態の共通点
◇歯の本数
◇骨の数
◇皮膚に汗腺がない
◇嗅覚が優れている
このように形態から見てみると、オオカミと犬とはとても共通している点が多く、やはりオオカミは祖先なのだということが裏付けされますね。
オオカミが犬へと進化していく過程で、人間との関りが深くなっていけばいくほどに、扱われ方や食べものの影響により、歯の尖り具合や顎の鋭さ、そして、動作行動に違いが少しずつ生じていったことが想像できます。
・食生活の関りと進化の兆し
オオカミは肉食系で、犬は雑食系と言われています。
では、オオカミを祖先にもつ犬が、どのようにして雑食化していったのでしょう。
人類の発祥は今から約350万年前のアフリカといわれています。
その当時のヒトの食べものと言えば、木の葉、果物、木の実という植物を主食としていましたが、約250万年前になると、氷河期になり気温の低下により植物は育たなくなります。
そこで、ヒトは狩猟採集を始めるようになり動物性タンパク質や脂肪を摂取するようになりました。
オオカミが犬に進化していく過程でよく言われているのが、「オオカミがヒトの食べ残したものを食べるようになって人間の生活圏と関わるようになった」という説です。
また、ある説では、「オオカミの成獣はヒトには懐かないので、幼獣を捕獲してヒトが餌を与え家畜化していったのではないか」ということなども言われています。
いずれにせよ、ヒトが食べていた食べものとの関りが、オオカミを犬へと進化させる要因のひとつだったのではないでしょうか。
オオカミが狩りをして捕獲した動物を食いちぎっていたのに、狩りをすることも食いちぎることもしないとなると、必然的に顎の形も歯の形状もかわってくることでしょう。
野生から離れて人間と共生する運命となったオオカミは、性質・性格・形態を徐々に変化させ、人間生活に適応できる雑食系の犬へと進化したものの、遺伝子のどこかにオオカミである証を残したのかもしれません。
このことからも、環境はもちろんですが食べものが生態に与える影響というものが、いかに大きいかということが伺えますね。
犬の食事は、ルーツに在り!
オオカミが長い年月をかけて犬へと進化したこと、そして、その犬も今では、派生して様々な性質を持つ多様な犬種として増えていることは、人間と犬との関係性が歴史を作り出していると言えますね。
人間と暮らすようになっても、実は、犬の消化器官はほとんど変わっていません。
ですから、元もと犬は野生の動物と同じように生肉や生の骨、生の内臓を消化するようにできていているのです。
農耕が盛んにおこなわれるようになり穀物を摂取するようになりましたが、やはり穀物を消化するためには時間がかかります。
まして、ドライフードはといえば、犬は噛み砕いて食べているわけではなく飲み込んでいると表現してもよいでしょう。
ですからそのまま胃から腸へと運ばれていきます。
また、ドライフードが完全に消化されるならいいのですが、消化されないものはそのまま体の中に残ってしまいます。
それらが、肥満の原因を作ったり病気の源となったりするのです。
食べものを咀嚼できない犬にとって消化のしやすい食べものを与えてあげることが大切です。
では、どのような食べものが適しているのでしょう。
オオカミを思い出してください、捕食のためにシカを射止めていたことを。
焼いたり煮たりしてシカを食べていたでしょうか。
いいえ、そのまま狩りをして生肉を食べていたのでしたね。
野生動物にとって生肉は消化の良い貴重なタンパク源です。
生肉には酵素、ミネラル、ビタミンなどの栄養素が豊富に含まれていますから、その栄養素をそのままスムーズに消化吸収できます。
本来、犬の食事は習性として生肉・生骨・生内臓が適しているのです。
愛犬を野山に放して「鹿を取ってこい!」というわけにはいきませんし、かといって、飼い主さんが狩りをして愛犬に生肉を与えるということは土台無理な話です。
そこで最近では、シカ肉をはじめ馬肉などの生肉を取り扱う業者さんやペットショップも増えてきて、犬に新鮮な生肉を安心して与えることができるようになりました。
また、ドライフードに代わる「生食ローフード」を扱うペットショップも登場しました。
これは、加工されていない生の食材を用いたフードのことです。
非加熱のため栄養が損なわれませんし、生肉を中心に生贓物、生骨、発酵野菜や果物を原材料とした栄養バランスの整った総合栄養食です。
これこそが、オオカミを祖先に持つ犬たちが本当に欲する食べものといえるでしょう。
生肉を食べたからといって、愛犬が野生化するという心配はありません。
犬の体にとって本当に適した食事を考えていくと、犬のルーツに必然的にたどり着くのです。
さて、犬の祖先はオオカミであることを少し意識して愛犬を見てみましょう。
どうですか?
今、目の前にいるこの愛しい犬は、長い年月を経て進化を遂げてきた貴重な存在なのです。
そして、飼い主さんと出会うために、こうして連綿と命を繋いで存在していること、家族になったことは奇跡としか言いようがありませんね。
どれほどの長い時間が経過しようとも、愛犬の体の細胞にその記憶となるものがずっと受け継がれ存在していることは否定のできない事実です。
それが、ルーツなのです!
さあ、これからも未来に向けて愛犬とともに楽しい旅を続けていきましょう!
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愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。