秋の七草と言えば、ハギ(萩)、ススキ(すすき)クズ(葛)、ナデシコ(撫子)、オオミナエシ(女郎花)、
フジバカマ(藤袴)、キキョウ(桔梗)。
春の七草は食するためで、秋の七草は目で楽しむものと言い伝えがあります。
しかしながら秋の七草の根などは、咳止め・胃痛・利尿作用・肩こり・神経痛・むくみや高血圧・消炎作用・喉の痛みなどにも良いと言われていて「おばあちゃんの知恵袋」としても知られています。
都市で暮らしていると自然と触れ合う機会もグーンと減りがちですが、コオロギやスズムシの音色を聞き出すと、野や山へと出かけたくなりますね。
愛犬と楽しむアウトドア……野を駆け回り新鮮な空気をいっぱい吸って、可憐な野の花を摘んで……と、楽しい光景が目に浮かぶのですが、意外や意外、そこには想像もしていなかったような危険が待ち受けているのです。
えっ?何?何?
それは、植物や虫などが起こすアレルギーや中毒です。
心が弾むこの季節だからこそ野外で注意すべきことを知っておきましょう。
犬が草や花やキノコまで食べるって、ほんとう?
結論から言えば、ほんとうです!
「あっ、大好きな草!」と,主食ではありませんが、食べます。
「わぁ~、ナメタケ!」と、識別していませんが、食べます。
「きれいな花だなあ~」と、種類は知らずとも、食べます。
では、なぜ食べるのでしょう。
たとえば草を食べる理由には諸説あり、そのいくつかを挙げてみると
・嘔吐するため
消化不良を起こしている場合など、草が喉や胃壁を刺激して嘔吐しやすくしている説
・栄養不足を補うため
犬の祖先であるオオカミは草食動物のシカやウサギを追いかけ捕食し、草や野菜の栄養素を補っていたといわれている。
そのオオカミの名残がある犬は、雑草を食べて栄養を補っている説
・胃腸内のお掃除のため
グルーミングをした際に飲み込んだ毛、腸内にいる寄生虫などを食べた草とともに吐き出したり排泄したりする説
・目の前に草があるため
さほど意味があるわけではなく、たまたま口に入れる説
上記は、諸説ある中のいくつかで、「犬が草を食べる理由」としてよく取り上げられていますが、あくまでも仮説とのことです。
草を常食としないかぎり、犬が草を食べるという行為自体は犬にとってはごく普通のことであり、異常行動ではないといわれています。
草だけに限らず、土を食べたりキノコや花を食べたりすることもあります。
問題は毒性のあるものやアレルギーを引き起こすものが植物の中には多く含まれていて、それを知らずに食べてしまうということです。
時間が経って愛犬の異変に気付き、病院に連れて行ったものの悲しい結果を招いてしまったという事例もあります。
屋外は犬にとっては未知の世界です。
楽しく過ごすためにも、野外での危険性を認知しておくといいですね。
ということで今回は、これから迎える秋の行楽シーズンを前に、野外で遭遇する毒性やアレルギーを引き起こす植物や虫たちについていっしょに考えていきましょう。
自然の中にある植物の危険
「天高く馬肥ゆる秋」……快晴の青空、しのぎやすい気候、涼やかな風に誘われて愛犬とアウトドア。
深呼吸して森林浴、トレッキングにハイキング、紅葉の中を歩くにも最適な季節ですね。
ところが、自然の風景に酔いしれていると、どうしたことか愛犬が耳やら体を掻きまくっている……何に触れたのか、何を食べたのか、はたまた何に刺されたのか、愛犬の顔の周りが赤くなったり痒がったりと、トラブルが生じたようです。
さて、何が原因なのでしょう?
緑いっぱいの自然道には、人や犬の天敵ともいえる植物が意外とあります。
ハイキングなど山歩きをしていると、私たちもいつのまにか顔や手がかぶれて赤くなったという経験はありませんか。
毒性のあるもの、鋭いトゲをもつもの、葉に刺激性の物質があるもの、葉や茎に樹液や汁液をもつ植物など。
知らず知らずのうちにこのような植物と接触してしまい、アレルギー性接触皮膚炎を起こしていたりします。
犬は毛で被われているから接触しても大丈夫と考えがちですが、肉球や粘膜部分は要注意です。
では、どのような植物に注意をすればよいのかを次に見ていきましょう。
◎注意すべき植物
*草花や木
トゲ:ピラカンサス、バラ、サンショウ、アロエなどは鋭いトゲを葉や茎に持つ
刺激:イラクサは、どこでもよく見かける草でジンマシンが名前の由来と言われている
樹液:ウルシ、ハゼなどは触れるたり近づいたりするだけでかぶれる可能性が高い
汁液:ウマノアシガタ、トウダイグサは、一見すると黄色くて可愛い花だが、皮膚炎を起こす
中毒:キョウチクトウ、アジサイ、トリカブト、アセビなどは毒性の成分を持つ
*キノコ類や実
日本にはおよそ4000~5000種類のキノコがあるそうで、そのうち食用とされるものが約100種類、毒性のものは約40種類と言われています。
残りは毒性なのかどうか判明していませんが、危険性が高いと認識しておいたほうがよいでしょう。
毎年秋のシーズンになると、毒キノコを食べて搬送されたというニュースを耳にしますから、山でキノコを
見つけても素人判断で持ち帰っての調理はやめておきましょう。
人間が食べてダメなものは、当然犬にとってもダメなものです。
こんな話があります。
ある飼い主さんが愛犬をリードに繋いで散歩をしていた際に、草むらに生えていたキノコを愛犬が食べてしまったらしいのです。
食べた直後は何ともなかったのでさほど気にもしていなかったのですが、しばらくすると嘔吐し、その後はふらふらしだし、驚くほどよだれをダラダラと垂らしはじめ、ついには意識障害を起こしたそうです。
もちろんそのあとは動物病院に駆け込んで愛犬は一命を取りとめたのですが、原因は毒性のキノコ。
伐採された木に生えていたり、公園などの木の根元に生えていたりと、山で自生していると思っているキノコも生活の身近なところで見かけることもあるのです。
道に生えているキノコについては、ほぼ毒性と思ってよいでしょう。
スーパーなどで販売している食用のキノコについては好き嫌いをする犬もあるでしょうが、食べてももちろん問題はありません。
また、秋の味覚のひとつである銀杏ですが、あの硬い実は果肉に包まれた中に入っていて、その果肉の臭いは強烈なにおいを発するのですが、実はその果肉のお汁がかぶれを起こします。
落ち葉に隠れて銀杏の果肉が落ちていることもあり、口に含んでしまうことや実を踏んでしまう可能性もあります。
落ち葉の上を踏みしめて歩くのはとても心地よいものですが、銀杏の木が傍に無いかを確かめましょう。
*いちじく
コンポートにしたらとても美味しいイチジクですが、枝から実をもぎ取るときに白い液体がジュワーっと出てきます。
葉や茎をちぎったときに白色や黄色い乳液が出てくる植物は、粘膜や皮膚に接触性の炎症を起こす可能性が高いといわれています。
*栗の実
栗の実自体に問題はないのですが、野外では栗のイガイガがとても痛いので、肉球を痛めないように気を付けて
あげましょう。
上記の植物の中には、山にかぎらず庭先や道路の脇で咲いているものもあります。
散歩する際には、このような植物に犬が近寄ったり食べたりしないように注意しましょう。
アレルギーや感染症
アレルギーは、アレルゲンと呼ばれるアレルギーのもとと接触することで起きてしまう症状のことです。
犬の免疫が何に反応するのかは、個々の犬の血液を採取して調べてみないとわかりませんが、ここでは主に
植物やマダニ、ダニ、ノミについてお伝えします。
*花粉症
アレルギーといえば思い浮かぶのが、「花粉症」。
春は、スギ、ヒノキ、イネなど
夏は、ブタクサ、ヨモギ、イネなど
秋は、ブタクサ、ヨモギ、セイタカアキノキリンソウ、イネなど
こうしてみると、季節を問わずアレルギーの源となる草花は身近にあります。
犬のアレルギー症状は、クシャミ、皮膚の痒みや乾燥、また、ヒトと同じように目の痒み、充血、目ヤニ、目の周りが赤く腫れるなどが挙げられます。
さらに、耳や目や口の周りが痒くて常に掻いているという動作も見られます。
では、花粉症にはどのような対策が必要でしょう。
【屋外に出るときの予防対策】
・花粉の飛散が多い時間帯は散歩やお出かけは控える
・花粉が被毛につく部分を少なくするためにもハーネスを着用する
【室内に入る前の予防対策】
・ブラッシングなどで被毛についた花粉を払いのける
【その他】
・刺激性の弱いシャンプーで花粉を洗い流す
(回数が多いと乾燥してしまうこともあるため、犬の負担にならないようなものを選ぶようにしましょう)
*マダニ、ダニ、ノミ
マダニは、草木の葉先などに潜んでいて人間や動物に飛び移って寄生します。
自然の多い山などはもちろんですが、たとえば公園や河川敷の草むらなど生活の身近なところにもいます。
大量に寄生し吸血されると貧血を起こしますし、マダニの唾液がアレルゲンとなり痒みを引き起こします。
日本では10種類以上のマダニが、日本全国津々浦々に生息しています。
貧血や皮膚炎などの症状や、病原菌の媒介により感染症の症状が出たりすることがあり、場合によっては重篤な状態になります。
ダニもどこにでも存在するのですが、特にイエダニはハウスダストの中に潜んでいます。
布団、ソファー、カーペット、犬用の寝具はダニの温床と言われています。
また、ノミは場所を選ぶことなく存在しています。
とくに春から秋に多く発生しますから、当然、散歩中やアウトドアでもノミに遭遇する機会は多々あります。
マダニ、ダニと同じように、ノミも寄生することで痒みが伴います。
吸い付いた箇所だけではなく、唾液がアレルゲンとなり全身にアレルギー皮膚炎を起こすことも少なくありません。
マダニ、ダニと同じく大量にノミが発生すると貧血になってしまうこともあるのです。
では、マダニやダニやノミにはどのような対策が必要でしょう。
【予防対策】
・ノミやイエダニにはこまめな掃除機、洗濯、拭き掃除など清潔な住環境を保つことが大切
・愛犬の体をこまめにチェックしてダニなどが付着していないか調べる
・もし、発見した場合はむやみに潰さないようにして、粘着性のあるテープなどで捕獲する
・安全性の高いマダニ・ノミ駆除薬を病院で処方してもらう
・虫やダニを寄せ付けない動物に安全性の高いスプレーなどを使用する
(特に寄生しやすい顔の周り、耳の付け根、肩や足など念入りにスプレーする)
・虫よけの首輪などを使用してダニやノミを寄せ付けないようにする
*ハチ
ハチと言えば、蜂蜜でおなじみの小さなミツバチや刺されると重症化するスズメバチ、よく見かけるアシナガバチ、ちょっと丸みを帯びた大きなクマバチなどさまざまです。
家の軒先や天井などにも巣を作っていることもあって、保健所に駆除してもらうケースもよく耳にします。
野外でハチの巣に遭遇したときは、まず近寄らないことがいちばんです。
ハチは敵が来たと思い巣を守るために攻撃してきます。
ハチは毒をもっていますから、刺されると刺された部位が腫れたり、赤くなったりして痛みや痒みを伴います。
軽症の場合は1日ほどで腫れは引きます。
さらにスズメバチのような全身に毒を運ぶ恐いハチもいます。
これはニュースなどでもよく報道され人が刺されて亡くなったということを再三耳にしますが、アナフィラキシーショックというアレルギー症状です。
このような場合には、すぐさま動物病院で診察してもらいましょう。
場合によっては、肝不全や腎不全などの臓器障害を起こすこともあります。
筆者も先日、奈良の猿沢池の傍を通った際に、突然おでこをクマバチに激突されました。
唐突に視界に現れ、激突されても防ぎようがありません。
刺されていないのにその後おでこが痛痒かったですから、ハチに対して何らかのアレルギー反応をおこしたのかもしれません。
自由自在に飛び回る神出鬼没な虫たちも要注意ですね。
【予防対策】
・マダニ・ダニ・ノミと同じように、虫よけスプレーや虫よけの首輪をつける
・複数のハチが飛び交う場合は巣が近くにある可能性があるので、すみやかにその場所を離れる
・犬は動くものを追いかける習性があるので、突然走り出したりする可能性がありますからリードは必着!
身近にある植物にも注意
さて、行楽シーズンのお出かけなどで注意していただきたい植物や虫たちについてお話してきましたが、次に挙げる花の数々は、散歩中にもよく見かけるものばかりです。
ところが、その花も観賞している分にはよいのですが、もし、食べてしまったらやはり中毒を起こします。
秋の季節が過ぎ冬を迎えると咲くスイセン、春を待ちかねたように咲くチューリップ、夏の日差しが強くなるころに咲くユリの花などは、花壇やベランダで咲いていたり、また切り花としてもお部屋を飾ったりするステキな花々です。
そんな花にも毒性があるのでしょうか。
・球根
チューリップ、アマリリス、ヒアシンス、ユリ、スイセン、ヒガンバナ、シクラメンなど、これらは球根が育って花を咲かせる種類の花です。
犬が絶対に食べてはいけない食べものの中に「タマネギ」や「ニンニク」がありますが、これらの形を思い浮かべると、球根のような形ですね。
このように球根のような形をしたものは、毒性があるというふうに覚えておくといいですね。
その他にも春先に咲くスズラン、梅雨の頃を彩るアジサイ、夏の風物詩アサガオ(種子)など、どの季節にも犬にとっては毒性のある花が身近にたくさんあります。
もちろん観賞している分には危険ではないのですが、それを食べてしまうことが危険なのです。
症状としては、ふらつき、呼吸困難、嘔吐、痙攣、麻痺、意識障害などさまざまです。
脇道に咲いて季節を楽しませてくれている花々たちですが、一歩間違えると危険な花ということですね。
土を掘り返えす習性のある犬種もいますし、理由もなく花や土を食べてしまう犬もいます。
散歩途中でそのような危険な草花に近付き食べるような行動をしたら、気を逸らせたりその場から遠ざかったりしましょう。
また、室内においてはお部屋を飾るインテリアとして観葉植物を飾っている飼い主さんもおられると思います。
この観葉植物にも毒性のものがありますので注意しましょう。
お花屋さんの店先で陳列していることもありますので、食べてしまわないように注意しておきましょう。
・観葉植物
ポトス、モンステラ、クワズイモなど
これらはサトイモ科の種類で、粘膜や皮膚には刺激的な物質を含んでいますから食べると口の中の粘膜が赤くなったり腫れたりただれたりします。
このように植物や虫などが犬に及ぼす影響をいろいろと見てきましたが、「もう、外に連れていくのは怖いわ!」と臆病になっていませんか?
たしかにこうして調べてみると、身の回りにある見慣れた草花にたくさんの危険性があることに驚かされます。
しかし、犬はむやみやたらと好んで草や花を食べるわけではありません。
ただ、何も考えることなく食べてしまうことがあるということを知っておくと、未然に危険を防ぐことができるはずです。
文中にも書きましたが、「屋外は犬にとっては未知の世界です」。
自然の空気に触れ、太陽の光を浴び、風を感じることは犬だけに限らず飼い主さんの心も解放してくれます。
日本にある四季を楽しむ歓びを、どうか愛犬と味わってください。
自然とうまく付き合っていくこと。
私たちヒトも犬も、自然の中で共生している生きもののひとつひとつです。
さあ、秋の季節を愛犬とともにエンジョイしましょう!
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愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。