先日、知り合いの飼っているスタンダードトイプードルが、サークルの中で飛び跳ねていたらゲージの柵の間に足を挟み込んでしまい、しばらく歩くのをつらがっていたという話を聞きました。
「まさか、ゲージに足を挟んでしまうなんて思ってもいなかったからビックリしたわ」と飼い主さん。
そんな話を聞くと、犬にとって家の中というのは思わぬアクシデントが潜んでいるのだと気づかされます。
考えてみれば、私たちは人間目線で生活をしていますよね。
でも、ちょっと犬の目線に立って家の中を見渡してみると……案外危険だなあと思うものがあちらこちらにあることに気づきませんか?
ということで、今回は愛犬と暮らす住環境での注意点をいっしょに考えていくことにしましょう。
目次
誤飲
食べもの以外のものを誤って飲み込むことを「誤飲」といいます。
誤飲で多いのが、「電池」です。
乾電池は、リモコン、置き時計、掛け時計、懐中電灯などに使われていて、種類も単1~単4形までの大きさがあります。
また、ボタン型やコイン型の電池は、携帯ゲーム機、時計、電子辞書などに使われていて、丸くて小さい形をしています。
電池にはアルカリ電池やリチウム電池などの種類がありますが、その電池の危険性を記した文献が在りましたのでご紹介しておきましょう。
『アルカリ電池は胃の中に入ると放電し胃の中の胃酸で被覆されている金属が腐食され,電池の中にあるアルカリ性の物質が流れ出て胃の壁を損傷します。
また、リチウム電池では30分から1時間という非常に短時間でも消化管の壁に潰瘍を作ってしまうのです。
リチウム電池は間違って飲むとアルカリ電池よりもさらに危険と言えます。』
いかがでしょうか。
電池を飲み込んでしまうと危険だということがわかっていただけましたか。
「置きっぱなしにしていた」というちょっとした不注意で悲惨な状態を招いてしまうのです。
他にも誤飲に多いものを挙げてみましょう。
・お金(硬貨)
・洗剤(台所洗剤/衣類用洗剤/シャンプー/石鹸/漂白剤
・画びょう/クリップ/ヘアピン/針/ガラスの破片/輪ゴム/布切れ/ボタン
・たばこ/防虫剤/乾燥剤
・マニキュア/除光液
・イヤフォンのスポンジを含むプラスティック製品など
私たちが便利だと思って使っている物も、愛犬にとっては危険なものばかりです。
また、最近多いのがスマートフォンなどのイヤフォンの先に付いているスポンジやシリコン。
これらは案外簡単に外れてしまい、無くなっていることに気づかないということもあるようです。
排泄できればいいのですが、プラスティック製のものは胃の中に残ればけっして消化されるものではありません。
●飲み込んでしまうような小物は出しっぱなしにしない。
●使ったらすぐに引き出しの中や手の手届かないところに片づける。
●洗剤やマニキュアなどの液状になったものはしっかりとキャップをする。
噛む、巻き付く、絡みつく
・電気コード
私たちの生活には、コンセントに差し込まなくてはならない電化商品で溢れかえっています。
コードやケーブルがデスクの下、テレビの裏でゴチャゴチャと丸まって絡まっていませんか。
コードに体を巻き付けてほどけなくなってしまうことがあります。
テレビ、エアコン、カーペット、ファンヒーター、インターネット周りのOA機器、空気清浄機などの生活用品に加えて、台所では炊飯器、冷蔵庫、湯沸かしポット、電子レンジがコンセントを占領。
また、最近ではスマホの充電器やイヤフォンのコードも絡まる原因に加えられています。
さらに、絡みついたコードを引っ張ることによって、コードの先端にある物が落ちてきて頭や体を直撃することも考えられます。
さらに、犬がコードやケーブルを噛んだとなると、さあ、大変です!
インターネットなどのOA機器などのコードを噛んだために作動できなくなり、データ保存する間もなく大切なデータが消えてしまったという二次被害も生じます。
最も怖いのは、絡んだコードを体に巻き付けてしまって窒息したり、噛んだことで感電したり、さらには、配線のショートによって発火し火事になる危険性があるということです。
●足元にあるコードなどは結束バンドなどで束ねたり短くしたり、愛犬の届かない高さに止めたりする。
●カーペットなどの下に伸びたコードを隠す。
●コードは、カバーをしたりコードボックスの中に収納したりする。
●スマホの充電器やイヤフォンのコードなどは、マグネット式コードクリップなどを使ってまとめる。
・ソファー、テーブル(の足)、ドア、サークル(クレート、ゲージ)、スマホ、眼鏡など
そもそもなぜ、犬は噛むのでしょうか。
噛む理由として、歯が生え出し乳歯がどんどん生えそろい、次に永久歯へと生え変わるころになると、歯茎がやたらとムズムズするために、何か物を噛んで歯茎のムズムズ感を落ちつかせたいのです。
大切な家具など噛まれて困るのは、どこの飼い主さんも同じです。
●犬用のガムや噛むおもちゃを与える
(ただし、飲み込む大きさまで小さくなれば取り上げて、新しいものを与えましょう。)
●生骨を与える
骨についた筋を引っ張ったり、硬い骨を噛んだりすることでストレスが軽減する。
(エゾ鹿のあばら骨、鶏手羽先、鶏ネック骨つきなどがお勧めです。)
食べるな、危険!
犬に絶対に与えてはいけない食べもの
・チョコレート/キシリトール類
・タマネギ/ニンニク/アボカド/ブドウ/レーズン/ナッツ類
上記に挙げている食べ物はいずれも犬にとっては中毒症状を起こすものです。
飼い主さんが食べているときに欲しがっても、けっして与えないでください。
●犬にとって危険な食べものを知る。
●中毒を起こすものを食材として取り入れない。
不用意に置かれた危険なもの
・たばこ
たばこは、舐めたり飲み込んだりすると犬の場合は少量であってもニコチン中毒を発症し、重症化して最悪の場合は死に至ります。
●喫煙者のいる家の場合は、たばこをテーブルなどの上に不用意に置かない。
●灰皿の吸殻をそのまま放置しない。
(豆知識:タバコは喫煙者が吐き出す「呼出煙」、火の付いたタバコから立ち上る「副流煙」という「受動喫煙」
といわれていて、人や動物の体にも影響を及ぼしますから喫煙者だけの健康問題ではありません。)
・ゴミ箱の中身
愛犬がゴミ箱をあさって中身が散乱したとか、おもちゃで遊んでいる拍子にゴミ箱を蹴飛ばしてしまったとたんにゴミをあさって食べたということはありませんか。
愛犬は好奇心いっぱいですから、散乱したゴミを口に入れてしまうことがあります。
もし、その中にスナック菓子やチョコレートなどのカスが袋に残っていてそれを食べてしまったら……。
中には、糸くずや細い紐なども含まれているかもしれませんよ。
ゴミだと思って安易に捨てているものが、愛犬が食べてしまうと消化されない異物となる場合がありますから、これも要注意です。
●ゴミ箱は蓋つきのものにする。
●ゴミ箱の中身をマメに捨てる。
・放置されたままの食べもの
食事の後やおやつの後に、ついつい置きっぱなしになっていた食べものをみつけた犬はそれを食べてしまいます。
犬は嗅覚がとても発達した生きものです。
どこからかいい匂いがするなあ~と、そのにおいの発生元を探し始めるのが本能です。
食べたが最後、それが中毒症状を起こすものだとしたらたいへんですね。
また、中毒症状を起こさない食べものだとしても、過食の原因にもなります。
●食べものを不用意にテーブルや棚に置きっぱなしにしない。
●ドッグフードなどの袋の口はしっかり閉じる。
●高い場所や、犬の力では扉の開かない棚の中に保管する。
・観葉植物
ポトスなどのグリーンインテリアでお部屋を飾っている飼い主さんもいるでしょうが、実は草花によっては犬にとって中毒性が高い植物があります。
例えばポトスなどのサトイモ科は刺激的な物質を含んでいますから、食べると口の中の粘膜が赤くなったり皮膚が腫れたりただれたりします。
確かにグリーンの飾ってあるリビングはステキです。
しかし、植物の中には犬にとって毒性の強いものがあるということも知っておきましょう。
●イモ科の観葉植物は置かない。
●フラワーアレンジメント、生け花などの花の中にも中毒性のものがあるので注意。
気を付けたい「犬の植物アレルギー、中毒(草花・虫・キノコ)」
という記事を当サイトでも掲載していますので、併せて参考にしてください。
滑る
・フローリング
「床」と言えば、「フローリング」というくらい、最近の住居における床材の代名詞にもなっているのが木質素材の床、フローリングですね。
美しい木目の天然木や木材を化粧シートなどで加工した床材のフローリングは、バリエーションが豊富です。
ところが、このフローリングは犬にとってはいちばんの滑る危険度の高い素材であり、また弾力性が低いために足腰にかかる負担も大きいといわれています。
ピカピカに磨きのかかったフローリングの床は本当に美しいものです。
ところが、床材が滑りやすいと体重の軽い小型犬などは、態勢が取れませんから四方八方に滑り放題です。
犬はふつう肉球と爪でしっかり踏ん張って体を支えているのですが、滑る床材ではそれができません。
また、それに加えてジャンプしたり、ソファーや椅子から飛び降りたりすると、着地時に足を捻挫したり骨折したり、膝蓋骨脱臼という膝の骨(お皿)の位置がずれてしまうケースや「股関節形成不全」などの原因にもなります。
愛犬が爪の音を立てて、床を滑っている場面に遭遇したことはありませんか。
犬には大変な負担がかかっているのです。
●フローリング素材の床には、タイル状のフロアマットを敷く。
(色の組み合わせや好きな大きさにカットして使用できる)
●滑り止めワックスを塗る。
●滑り止め付きの靴下の着用。
・水場のタイル
お風呂などに使用されている陶製のタイル張り床などは、水に濡れると大変滑りやすいです。
●お風呂場に入らないように扉は常に閉めておく。
(滑る以外にも湯船で溺れる場合があるため)
●吸盤付きのマットで予防。
落下
・階段
先の項で「滑る」の床素材の木材が階段にも使われている場合は、滑るだけではなく階段から転げ落ちるという危険を招きます。
マットを引いたり滑り止めのワックスを塗ったりという方法がありましたが、もうひと工夫して危険を回避しましょう。
●階段の上り下りができないように柵を取り付ける。
・ベランダ
洗濯ものを干しにベランダに出た隙や、空気を入れ替えようとベランダのドアを開けたその隙に愛犬がベランダに出てしまって柵の間から落下ということがあります。
柵をすり抜けるなんてことは想像できないかもしれませんが、実は、犬の体は被毛でフワフワしていますが、実際は思ったよりも細いものです。
通り抜けられないと思いがちな幅も難なく通ることができると考えておきましょう。
●ベランダに出るクセを付けない。
●ベランダに出る場合は、サークルの中に事前に入れておく。
突っ込む、潜り込む
・隙間へ頭を挟む
上記の柵もそうですが犬は探検が好きで、思わぬところに頭を突っ込んでいくことがあります。
家具と家具のちょっとした隙間などに首を突っ込んで抜けなくなってしまうこともあります。
おもちゃやおやつがコロコロと転がって隙間に入ってしまったのを取ろうとして、頭が抜けなくなってもがいている間に喉を締め付けてしまい窒息してしまうこともあります。
・窒息や脱水状態
愛犬といっしょに寝るという飼い主さんもおられるかもしれませんが、布団や毛布の中にどんどん潜り込んで出られなくなってしまって窒息してしまうことも起こります。
また、布団の中は体温で暖められた空気が充満し、蒸せた状態になり脱水状態になる可能性もあります。
●犬が挟まりそうな隙間を作らない。
(そのような個所がある場合は、その前に物を置いてバリケードなどを作る。)
●犬はゲージの中や犬用のベッドで眠る習慣をつける。
やけど
台所に入ってきた際に、飛び跳ねる油が愛犬に飛ぶこともありますし、火にかけてある煮物や油の鍋が何かの
拍子に当たってひっくり返るという危険性が台所にはたくさんあります。
また、冬場には湯沸かしポットや保温ポットを使用するご家庭も多いと思いますが、ポットの熱湯でやけどする
ことは意外と多いです。
●台所(キッチン)などの危険な場所に立ち入らないように柵をする。
調理をしているときは、愛犬はサークルの中に入れておく。
●湯沸かし・保温ポットなどは、お湯が出ないようにロックしておくこと。
暑さに弱くて寒さに強い?
・室温調整
室温を適温にして快適に過ごすことはいいのですが、それが、過剰になり過ぎると犬のホルモンバランスを崩す原因にもなります。
寒いからと言って、エアコンをガンガン聞かせたり加湿器で部屋の湿度を上げたりしていませんか。
犬は寒い季節には強いのですが、それは、犬は被毛で暑さ寒さに適応できるように調整しているからなのです。
子犬、老犬、病中病後の犬以外は、たいてい自分で体温調節をしています。
ですので、飼い主さんが部屋の寒さを感じてふつうに暖房する程度の温度調整で、十分愛犬も快適なのです。
●寒い季節の過剰な暖房は必要がない。
当サイトの
『犬は冬が好き! ~ 寒さに負けないワン ~』
も併せて参考にしてくださいね。
反対に犬は夏の暑さにはめっぽう弱いのです。
飼い主さんが留守をするとき不用心になってはと窓を閉め切ったままにすると、室内の温度がどんどん上昇して熱中症になる危険性があります。
犬は寒さよりも暑さに弱い生きものだということを知っておきましょう。
●留守にするときは、閉め切ったままにせずにエアコンのクーラーで室内を涼しくしておく。
●給水タンクに水を入れておく
溺れる――お風呂場は危険がいっぱい
・溺死
お風呂のお水を入れっぱなしにしていて、蓋をするのを忘れてしまったために湯船に落ちて溺れてしまいます。
犬はともかく好奇心旺盛な動物ですから、興味を持てばどこでも遊び場所にしてしまいます。
・脱出不能
バスタブに水が張っていない場合は、溺れる心配はありませんが、浴槽がツルツル滑ってバスタブの外へ出られなくなってしまいます。
・誤飲
お風呂場にあるヘアーやボディーのシャンプー、石鹸やお風呂洗いの洗剤なども誤飲する可能性があります。
・打撲
お風呂場は壁面に被われた狭い場所ですから、滑ると頭や体を打ちます。
・やけど
温度の高いお湯が張ってある場合、浴槽に落ちた場合は全身やけどを負ってしまうことがあります。
狭い場所こそ危険度が増すと認識しておきましょう。
●お風呂場のドアはしっかり閉めて愛犬が立ち入れないようする。
●湯船の蓋をする。
●お湯はできるかぎり使用後は栓を抜いて空の状態にしておく。
もしものときの処置
ここまで誤飲から室温の調節まで、住環境における危険性について述べてきました。
どのようにしてその危険を回避できるのかについての例をいくつか書きましたが、実際に愛犬が危険なことに遭遇してしまったときは、どうすればいいのでしょう。
ここでは、そのようなときのお話をしておきましょう。
誤飲の場合
●無理に吐かせようとしない。
小さなものは排便といっしょに出てくる可能性があるので、無理矢理吐かせることで胃壁などを傷づけてしまうケースがある。
●水や牛乳などを飲ませようとしない
洗剤などを飲んでしまった場合、水でともかく胃の洗浄をしなくてはと思いがちですが、飲んでしまった液体によっては、水や牛乳などを飲むことで返って悪化させる場合がある。
中毒性のあるものを食べた場合
●まずどのような容態なのかを観察すること。
症状としては、元気がなくぐったりしている/下痢やおう吐がある/血尿が出ている/よだれを垂らしている/
息が荒い/麻痺や震え/発熱/呼吸困難/意識低下など。
●かかりつけの動物病院に連絡し相談する
・何をどれくらいの量食べたのか
・食べてからどれくらいの時間が経つのか
・愛犬の様子(症状の有無)など
滑ったときや落ちた場合
●安静にして様子を見る。
傷や腫れの有無を確かめ、応急処置をする
・赤く腫れて炎症を起こしている場合は、氷などでアイシングする
・骨折などの場合は、その箇所を包帯や添え木などで固定する。
●かかりつけの動物病院に連絡し相談する
・どのような状況で落下したのか
・愛犬の様子を伝える
やけどを負った場合
●すぐに水で冷やす
●かかりつけの動物病院に連絡し相談する
・何によってやけどをしたのか
・愛犬の様子を伝える
いずれにしても犬の様子が、いつもとどう違っているのかを観察し見極めることが大切です。
飼い主さんはパニックにならずに冷静に対処することを心がけましょう。
いかがでしたか。
家の中には、想像もしていなかったような危険なことがたくさんあることがわかっていただけましたか。
危険なことは、けっして回避できない問題ではなくて、工夫しだいで住環境をセイフティーゾーンへと変えることができるのです。
あなたの大切な愛犬が家の中で安心して暮らせるように、さあ、家の中を点検してみましょう!
対策アイテム
カーペット・マット
フローリングや階段に敷いて愛犬をケガから守る
ペットケージ・ハウス
使いやすく丈夫なので安心
冷暖房グッズ
リビングに違和感なく使用でき、かわいくてオシャレな対策アイテム
愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。