2017年9月に上映されたアメリカ映画『僕のワンダフル・ライフ』。
大好きな飼い主に会いたいと願う犬が、50年間で3度生まれ変わってついに再会するという物語です。
この映画で最初に登場する犬種が、ベイリーという名前のゴールデン・レトリーバー。
当時8歳だった飼い主のイーサンと深い愛と絆で結ばれたことをきっかけに、死を迎えたベイリーは生まれ変わっても、またいつかイーサンに会いたいと強く願います。
3度の甦りを繰り返し遂に再会を果たす犬の純粋さを描いた物語は、動物と人間という関係を越えた愛を私たちに伝えています。
映画の中では最初の飼い犬だったゴールデン・レトリーバーの特徴がとてもよく描写されています。
その中でもとくに、「愛情深い」ということが挙げられています。
また、どっしりと落ち着いた風貌からは「穏やかな性格」が伝わってきます。
映画の中に登場するゴールデン・レトリーバーの利発さやけなげさに感心した人も多かったことでしょう。
とはいえ、ゴールデン・レトリーバーのような大型犬といえば「飼育するのは難しい!」と、思う人も多いはず。
飼育上での難しいことももちろんあります。
しかし、大変なことは小さな犬にも大きな犬にもあるものなのです。
それぞれの犬種のことを知り、その大変さを理解してひとつひとつ解決していくことで、愛犬との距離も縮まっていくように思います。
まずは、相手を知ること!
さあ、今回のテーマ「ゴールデン・レトリーバー」の魅力を知れば知るほどに、「飼ってみたいなあ」「家族になりたいなあ」と、思いが強くなるかもしれませんね。
そして、今飼っている飼い主さんは「ゴールデン・レトリーバーと暮らせて本当によかった」と、よりいっそう強く感じることでしょう。
ということで、今回はゴールデン・レトリーバーの魅力をいっしょに見ていくことにしましょう。
目次
ゴールデン・レトリーバーってどんな犬?
※JKC:一般社団法人ジャパンケネルクラブは、血統書を発行や、各種協議会、展覧会の開催、災害救助犬育成事業等、飼育奨励などの活動をしている団体
※FCI:国際畜犬連盟は1911年、ドイツ、オーストリア、ベルギー、フランス、オランダの5か国で設立された畜犬団体(ケネルクラブを含む)の国際的な統括団体
ゴールデン・レトリーバー誕生ストーリー
ゴールデン・レトリーバーを英語表記すると「Golden Retriever」。
このretrieverは、「~を取り戻す」という意味です。
このretrieverの付く犬種は、元もと「獲物を探して持ってくる」「獲物をくわえてくる」という意味合いを持って名付けられています。
日本を含むアジア地域は農耕民族ですが、ヨーロッパは狩猟民族。
狩猟対象がクマ・イノシシ・オオカミ、シカ、キツネなど陸地に棲息する動物が目当てでした。
食料、油、生活必需用品を狩りから得るためでしたが、その一方で中世ヨーロッパ時代には貴族のスポーツ、娯楽として盛んに狩りが行われたという背景があります。
ちょうどその頃、金色の毛をしていたフラット・コーテット・レトリーバーのオス犬がイギリスのチチェスター伯家で飼われていました。
そして、一方、ロバートソン伯家で飼われていたのは、ツィードウォーター・スパニエルというメス犬。
ある日、両伯たちは狩猟仲間のツイードマウス卿から「今以上に狩りの得意な犬を誕生させたい」という思いを打ち明けられ、両家の2頭は結婚させることになったのです。
狩猟の道具も弓矢や槍から銃、鉄砲が主流の時代を迎えます。
距離、獲物の数、大きさなど競い合い大空を飛ぶ鳥や水中で泳ぐ鳥を標的にします。
狩りでは銃で撃ち落としたあと、水面に落下し浮かんでいる獲物をすぐさま取ってくる犬が必要だったのです。
そこで
●水面を泳いで獲物を取ってくることができる犬
●獲物をくわえて持ってくる際に傷つけないように丁寧に扱うことができる犬
●人間の命令に従順な犬
それらの要素をクリアできるような犬の作出が求められたのです。
そうして、ツイードマウス卿の下で飼育された2頭の間には4頭の子犬が産まれました。
その4頭をさらに、優れた視力を持つアイリッシュセッター、水をはじく被毛を持ち水泳の得意なアイリッシュウォーター・スパニエル、嗅覚の優れたブラッドハウンドと掛け合わせていったのです。
それらの特徴を活かした犬を生み出し、1900年代には狩猟犬ゴールデン・レトリーバーの誕生へと結びついていきます。
1913年以降はイエロー・レトリーバーもしくは、ゴールデン・レトリーバーと呼ばれていたのですが、1920年、ゴールデン・レトリーバーという名称で統一され、その名が広く定着していきました。
外見上の特徴
近年、小型犬の飼育が目立ちますが、大型犬の中でもゴールデン・レトリーバーの人気は衰えを知りません。
道でその姿をみつけると堂々とした風貌に何ともいえない落ち着きや包容力、たくましささえ感じます。
この犬種はイギリス生まれですが、その性質を持つ子「イングリッシュ・ゴールデン・レトリーバー」と、イギリスからアメリカに渡りそこでさらに改良した「アメリカン・ゴールデン・レトリーバー」という2種類があるのです。
日本で見かけるのは、アメリカン・ゴールデン・レトリーバーがほとんどです。
体格
この犬種の特徴のひとつによく食べることが挙げられます。
大型犬なので、「もっと食べさせたほうがいいかしら…」とばかりに食事を与えすぎると、たちまち肥満になる傾向がありますから、これは要注意!
体を触ってみると肋骨や背骨が脂肪でわからなくなっていませんか?
ゴールデン・レトリーバーの堂々としたあの体格は、きちんと食事のカロリーを考え、しっかり運動させてこそできあがるのです。
・がっちりとした骨格
・筋肉質
イングリッシュ・ゴールデン・レトリバー:ややずんぐり体型
アメリカン・ゴールデン・レトリーバー:やや締まった体つき
顔
・顔の横には大きな垂れ耳
・笑っているようなU字型の口角
・大きな顔にアーモンドのような形のつぶらな目
イングリッシュ・ゴールデン・レトリーバー:目や鼻は黒色 マズルは短め
アメリカン・ゴールデン・レトリーバー:目や鼻の色は濃い茶色 マズルが長め
被毛 ― 色
イングリッシュ・ゴールデン・レトリーバー:白 クリーム色
アメリカン・ゴールデン・レトリーバー:ゴールド系からブラウン系
被毛 ― 長さ
ゴールデン・レトリーバーは長毛種なのに毛が伸び続けることはないので、頻繁にトリミングをする必要はありませんが、衛生上、お尻や足の裏などはカットしましょう。
被毛はダグルコートと呼ばれる上毛(オーバーコート)と下毛(アンダーコート)を持つ2層構造のダブルコート仕立てですから、換毛期には抜け毛が多いです。
・ブラッシング
日ごろからマメにブラッシングして手入れしておくことが、換毛期を乗り切るひとつの手立てです。
・シャンプー
大きな体をシャンプーするのはとても大変ですが、月に2度ほどは洗いましょう。
・ドライ
シャンプー後はタオルドライでしっかり水分を吸い取り、そのあとはドライヤーでしっかりと乾かします。
耳は垂れ耳ですから、耳を持ち上げて水気を取るようにします。
しっかり乾燥させないと蒸れてしまって皮膚病などの原因になりますので注意しましょう。
イングリッシュ・ゴールデン・レトリーバー:毛並みは短く硬めでウェーブが多い
アメリカン・ゴールデン・レトリーバー:ストレートで柔らかい
人に安心感を与える表情
チワワのような小さな犬は、その小ささと愛らしい表情に癒されることも多いのですが、ゴールデン・レトリーバーは大きな犬なのに、なぜこうも人を癒す力と魅力をもっているのでしょう。
ゴールデン・レトリーバーの表情には、穏やかさがにじみ出ています。
人を安心させるような柔和な表情が、「慌てなくていいよ」とか「そばにいるからね」というように、人に寄り添ってくれるあたたかな雰囲気を醸し出しているのでしょう。
人間の赤ちゃんの傍でそっと寄り添う画像を見ていると、とても慈愛に満ちた表情をしています。
子犬を育てているときも人間の赤ちゃんを見つめる表情も同じように慈しみ深いものが伝わります。
誰に対しても見せるその愛情たっぷりのまなざしが、ゴールデン・レトリーバーの大きな魅力です。
ゴールデン・レトリーバーを含む犬たちの活躍の場に病院や介護施設、障がい者施設、学校、養護施設、刑務所などがあります。
そこでは、セラピスト犬として人の心や体を健康に導くという重要な役目を担っているのです。
特に大型犬はドシッとした落ち着きが人に安心感を与えてくれるようです。
日々の生活の忙しさに追われる現在、私たちはついつい険しい表情になりがちです。
できれば、いつもゴールデン・レトリーバーのように慈しみの表情で居られたら……と、ゴールデン・レトリーバーのたくさんの画像を見ているうちに、疲れがふぅ~と抜けていくような気になります。
やはり、ゴールデン・レトリーバーはセラピスト犬なのですね。
温厚さとアクティビティーな面を兼ね備えた性格
ゴールデン・レトリーバーといえば、温厚な性格という印象を多くの人がもっていることでしょう。
その気質の元は、先の誕生ストーリーでも述べましたが、鳥猟犬という性質が多分に影響をしています。
狩猟に同行する際は、獲物に気づかれないように静かに待つことが求められ、狩猟した鳥などを傷つけないように、飼い主の元まで運ぶことをさらに使命としています。
「物を探して飼い主さんに持ってくる」という作業能力に優れているゴールデン・レトリーバー。
この一連の行動がちゃんとできるようにDNAに組み込まれているのです。
ですから、幼犬時期にはしっかりとしつけて、その特質を引き出してあげることが必要なのです。
また、水猟犬として泳ぐ運動能力や水をはじく毛質からも、比較的水を恐れないのもゴールデン・レトリーバー。
行楽シーズンを利用して、山や川や海などにお出かけスケジュールを立ててみるものいいですね。
本来持っているゴールデン・レトリーバーの性格を大いに引き出してあげて、楽しい時間を共有しましょう。
遠出がまだ少し無理な場合は、ドッグランなどで走らせて運動量を増やしてあげたいですね。
かかりやすい病気と対策
胃捻転
食べものを食べて大きく膨らんだ胃が垂れ下がってねじれてしまう状態。
バクバクと早食いしたり水を大量に飲んだり、また、食後すぐに散歩に連れて行くなどの状況から発症を招くことがあります。
●症状
・そわそわしだす
・吐きそうにえづく
・お腹が膨らんでくる
・症状が進むと、お腹の中にガスが充満し他の臓器や血管を圧迫して壊死したり破裂したりする
●予防方法
・1回の食事を小分けにして与える
・水を与えるときは、たくさんの量を一度にガブ飲みさせない
・散歩は食事の後よりも先に済ませる
重症化する場合が多いので、その場合はすぐに病院に連絡を取ります。
胃が動くことで起きる恐い病気ですから、再発を避けるためにも胃を固定させる手術を行います。
悪性腫瘍(癌)
ゴールデン・レトリーバーは、悪性腫瘍で亡くなることが多い犬種です。
早期発見がしづらいことが症状を悪化させたり、件数を増やす原因にも挙げられたりしています。
遺伝的に悪性腫瘍になりやすいともいわれていて、血液検査ではなかなか発見するのが難しいのです。
胸や腹部の超音波、CTなどの画像検査をしてはじめて見つかることが多いのもこの病気の特徴です。
●症状
・体表や体内にしこりができる
・痩せてきた
・元気がない
●予防方法
日ごろの観察や手入れの際に、しこりやできものができていれば発見する率も高いです。
ただし、体内にできたものについては、早期に発見することは難しいようです。
日々の暮らしの中で、何かしこりのようなものに触れることがあれば、きちんと調べてあげましょう。
「なんだかいつもと様子が違うなあ」と感じとってあげることが何よりも大切です。
上記のような症状が見られたら、まずはかかりつけの病院に相談しましょう。
股関節形成不全
この病気は遺伝子性疾患から発症することもあれば、環境にも影響を受けることがあります。
発症しやすい年齢は、幼犬の頃から誕生くらいまで多いようです。
●症状
・腰を左右に揺れ動かして歩く(モンローウォーク歩行)
・両方の後ろ足を同時に動かす(うさぎとび走行)
・散歩の途中で座り込んだりする
・痛み
●予防方法
・成長が著しい時期に発症しやすいことから、肥満にならないように注意
・高タンパク低カロリーの食品を選ぶ
・お薬での対処
・進行状況によっては手術
ゴールデン・レトリーバーをとおして考える
大型犬のゴールデン・レトリーバーは、できれば毎日1、2時間の散歩などの運動するように促す情報が多いです。
確かに、家の中でじっと一日を過ごして食事と水と寝ているだけというのでは、老犬か病気の犬です。
元気なゴールデン・レトリーバーであれば、適度な運動をさせてあげるのは自然のことです。
ボールを投げて取って戻ってくる、ボールを隠しておいて探し当てるなどの「探す」⇒ 「くわえる」⇒「差し出す」という動作が好きです。
また、もともとは狩猟犬としてその役割を担ってきた因子を持つゴールデン・レトリーバーは、走ったり跳んだりすることがとても得意ですし大好きです。
犬の祖先はオオカミです。
オオカミの姿からゴールデン・レトリーバーを想像することはできるでしょうか。
想像が難しい犬種ほど改良が重ねられているのです。
それに伴って弱い遺伝子が生まれてしまいそれを引き継いでいくリスクも高まります。
そんな弱い遺伝子を持って発症した大型犬の場合は、体重も半端なくありますから油断すると肥満になり返って股関節に負担をかけてしまうことになるのです。
そう考えると、運動と食事のバランスがゴールデン・レトリーバーのような犬には特に必要だということが言えるでしょう。
今回ゴールデン・レトリーバーを調べていくうちに、行きついたのは、運動と食事のバランス、そして愛情です。
運動はストレス発散、肥満解消にとても役立ちます。
食事は質の良いものを食べることで、体を作り上げくれます。
とくに良質のタンパク質には、酵素が含まれていて消化吸収を助けてくれます。
消化吸収が良いということは、体の中に必要な栄養素がいきわたって血肉作り健康な体の基本となります。
そして、愛情は犬にとっても人にとっても心を満たす素敵なエッセンスです。
ゴールデンレトレバーの愛情深い性格は、もちろん生まれ持っているものですが、それを上手く引き出せるのは、飼い主さんの深い愛情があってこそ。
せっかく持って生まれた愛情を、引き出して伸ばすのは、そう、私たち人間の手に委ねられているということを改めて考えていく時代なのかもしれませんね。
帝塚山ハウンドカムのネットショップ
愛犬に生肉を与え続けて10年の川瀬隆庸が監修
代表取締役 川瀬 隆庸
- 社団法人 日本獣医学会 正会員 会員No.2010172
- 財団法人 日本動物愛護協会 賛助会員(正会員)No.1011393
- ヒルズ小動物臨床栄養学セミナー修了
- 小動物栄養管理士認定
- D.I.N.G.Oプロスタッフ認定
- 杏林予防医学研究所毛髪分析と有害ミネラル講座修了
- 正食協会マクロビオティックセミナー全過程修了
愛犬の健康トラブル・ドッグフード・サプリメントなどアドバイスをいたします。