「本町獣医科サポート」の獣医師 北島 崇です。
ペットとの散歩には良い季節です。
特に緑が多い公園はオーナーの気分転換になり、また愛犬は草木が生えている場所が大好きです。
しかし、ここで気になるのが蚊による虫刺されです。
今回のテーマは薬を使わないペットの虫よけ対策です。
虫刺され対策アンケート
ペットの情報サイト:ペットウェルが実施した愛犬の虫刺されに関するアンケートがあります(2015年)。
505人のオーナーから次のような回答が得られていますが、みなさんの意見はどうでしょうか。
虫刺されに対する不安
質問:愛犬が蚊に刺されたことがありますか?
…ある(43.4%)、ない(16%)、わからない(40.6%)
質問:愛犬が蚊に刺されることに不安を感じますか?
…とても気になる(57.2%)、少し気になる(37.4%)
…あまり気にならない(4.2%)、まったく気にならない(1.2%)
イヌは全身が被毛で覆われているため、蚊に刺されたことがあるかどうかわからない(40.6%)という回答が多いのは納得です。
また、愛犬が蚊に刺されることに対して合計で約95%のオーナーは不安を感じでいます。
それは単にかゆい(かゆそう)だけでなく、フィラリア感染のリスクと関係しているためです。
フィラリア感染の不安
質問:愛犬が蚊に刺されることに不安を感じる理由は?(複数回答)
…フィラリアの感染リスクがある(67.4%)
…愛犬がかわいそう(65.1%)
…オーナーのストレスになる(20.7%)
…以前に刺されたことがあり大変な思いをした(6.5%)
…その他(1.3%)
愛犬が蚊に刺されることに対して、オーナーが一番に感じている不安はフィラリア感染のリスクでした。
また、「愛犬がかわいそう」と「以前に大変なお思いをした」という回答は、目や鼻口のまわりがひどく腫れたとか、虫刺されアレルギーの経験のことと思われます。
オーナーが求める効果
では最後の質問ですが、これはとても興味深い結果になっています。
質問:吸血昆虫に対して駆除薬に求める効果は?
…虫が寄ってこない忌避効果(70.3%)
…虫が刺さない吸血防止効果(19.2%)
…虫を殺す殺虫効果(10.5%)
前回紹介したように、吸血する蚊には2種類ありました。
積極的に家の中に飛んできて私たちを刺すイエカ(探索吸血型)と野外の草むらで対象となる動物がやって来るのを待つヤブカ(待伏せ吸血型)でした。
家の中で蚊やハエを見つけた時は殺虫剤を噴霧しますが(=殺虫効果)、愛犬が虫に刺されるタイミングはほとんどが野外で遊んでいる場合です。
ペットの健康のことを考えると公園などで遊ばせてあげたいのですが、このような場面では殺虫剤よりも虫よけ剤(=忌避効果)が求められているようです。
アロマオイル
アロマオイルと聞くと天然ハーブとかリラクゼーション効果といったことを連想します。
精油のはたらき
植物の葉や花、種、根などから抽出した揮発性のある物質を精油といいます。
精油はエッセンシャルオイルとも呼ばれており(こちらの方が馴染みがあります)、揮発性であるためいろいろな匂いをもっています。
またアロマオイルという言葉もあります。
アロマとは「芳香、良い匂い」のことですので、大きくは精油(エッセンシャルオイル)=アロマオイルと考えても良いでしょう。
精油には原料の植物に由来する様々な匂い成分が含まれており、次のような私たちの生活に有用なはたらきが報告されています(今西二郎 京都府立医科大学 2008年)。
みなさんも良く名前を耳にするものがあると思います。
○ラベンダー …鎮静作用
○ユーカリ …精神高揚作用
○ペパーミント …抗菌作用
○クローブ …抗炎症作用
虫よけ作用
植物由来で虫よけ作用をもつ精油についてはたくさんの研究報告があります。
代表的なものがユーカリ精油、ゼラニウム精油、レモングラス精油、シトロネラ精油などです。
私たちの身の周りにはハエ、カ、ダニなどいろいろな虫がいます。
ここではフィラリアを媒介するヒトスジシマカと、これからの季節に気になるハエに忌避作用をもつ精油を紹介しましょう。
ユーカリ精油の作用
ユーカリと言えばコアラのエサですが、現物のユーカリをじっくりと見る機会はないと思います。
このユーカリの葉から抽出されるユーカリ精油には、抗炎症作用や抗酸化作用をはじめとするさまざまな生理活性があります。
蚊に対する忌避作用
ユーカリには600以上の種類があるようです。
従って、精油の虫よけ作用はその種類により若干の差はあります。
6種類のユーカリ精油を用いてのヒトスジシマカの忌避率を調べた報告を見てみましょう(西村弘行 北海道東海大学 2004年)。
●供試動物 マウス
●供試精油 1%濃度ユーカリ精油、クスノキ精油(対照)
●評価項目 ヒトスジシマカの吸血忌避率(%)
忌避率について少し説明します。
忌避率とは対象となる虫が100匹いた場合、このうち嫌がって近寄らなかった匹数の割合をいいます。
例えば忌避率80%なら100匹中80匹は寄って来なかったということになります。
数値が大きいほど虫が嫌がっているという意味です。
マウスを用いた試験では、ヒトスジシマカに対して60~80%もの吸血忌避作用をもつユーカリ精油があることが判ります。
虫よけ剤:ディート
女性の方や小さなお子さんが外で遊ぶ場合、虫よけスプレーを使用すると思います。
市販の虫よけスプレーに使用されている有効成分にディート(DEET)という化学物質があります。
このディートは米国で開発され、虫の忌避剤としての有効性や効力の持続性が優れているため、日本はもちろん世界中で広く使用されています。
ディートの安全性に関しては特に問題は無いのですが、厚生労働省から次のような使用上の注意点が発信されています。
・使用年齢(乳児には使用しない)
・使用回数(幼児には1日1回など)
・使用部位(顔には使用しない)
ディートを主成分とする動物用の虫よけ剤(動物用医薬部外品)が市販されていますが、ペットの場合どうしても薬剤を噴霧した部位の被毛を舐める可能性があります。
このためペットには化学合成剤よりは植物由来で忌避作用がある精油(アロマオイル)が好まれます。
ディートvsユーカリ精油
薬品であるディートと比べてアロマオイルには安心感がありますが、肝心な蚊の忌避効果はどうでしょうか?
ヒトスジシマカに対する有効性をディートとユーカリ精油で比較した次のような研究報告があります(海外論文 2005年、2017年)。
●供試動物 ヒト
●評価項目 ヒトスジシマカの吸血忌避作用
:忌避時間
…ディート(196.67分)、20%ユーカリ精油(87.50分)
:作用持続時間
…ディート(6時間)、15%ユーカリ精油(3時間)
このように植物系のユーカリ精油には、ディートのおよそ半分ですが十分な吸血忌避作用があります。
ヒトスジシマカはフィラリアを媒介する昆虫です。
従って、愛犬のフィラリア予防策の1つとしてユーカリ精油を活用するのは良いアイデアと考えられます。
その他のアロマオイル
暖かくなると家の中のハエやコバエが気になります。
次は代表的なアロマオイルがもつハエの忌避試験データを紹介します(谷 重和ら ㈱環境文化創造研究所 2008年)。
ハエに対する忌避作用
谷の報告によると、イエバエに対する忌避率が高いものとしてゼラニウム精油(88%)、ユーカリ精油(59%)、シトロネラ精油(44%)があります。
ショウジョウバエに対する忌避作用
イエバエよりももっと気になるのがショウジョウバエです。
このショウジョウバエが嫌がるものとしてはゼラニウム精油(100%)、スペアミント精油(92.8%)、クローブ精油(80%)が確認されました。
バラのような香りがするゼラニウム精油は、ハエに対して広く忌避作用があるという成績です。
加えて先ほどのユーカリ精油やスペアミント精油(ハッカの仲間)なども高い忌避率を示していました。
現在、新型コロナウイルス感染予防のため、できるだけ外出を控えるよう求められています。
しかし運動そのものが禁じられているわけではありません。
自宅生活のストレス解消のためにも、ペットとの公園散歩はちょうど良い運動になります(ただし1~2人の少人数でお願いします)。
オーナーのみなさんはマスクをしっかり着用してのウイルス感染予防、愛犬にはアロマオイルを活用した虫よけ対策を行い、ペットを含めた家族全員の健康維持に努めて下さい。
(以上)
おすすめアイテム
アロマ 虫よけスプレー
ペット用虫スプレーは、ダニやノミ、蚊などからの虫よけにオススメの100%天然の自然成分から作られたどんな犬種も対応のアロマスプレーです。自然の力で優しくワンちゃんをケアしたい方にオススメです。
アロマ 虫よけマイルドスプレー
匂い控えめで使いやすく、アロマの香りが苦手な愛犬にもオススメです。
アロマ ブラッシングスプレー
スプレーをかけてブラッシングする事により愛犬の日々の被毛のお手入れやができます。
アロマ かゆみ乾燥スプレー
乾燥したお肌にスプレーするとホホバオイルの優れた保湿効果。
アロマ ストレススプレー
普段の生活でストレスを感じてしまう過敏な子や、長時間の移動などでのストレスが心配な時に。
アロマ 除菌・消臭スプレー
安全の天然成分で除菌・消臭+心安らぐいい香り♪
アロマ 車酔いスプレー
長時間の車移動でストレスを感じている時や、車が苦手な子に。
アロマ クールスプレー
散歩帰りや暑がっているときに冷蔵庫で冷やしたスプレーを肌に吹き付けてください。
ひんやりとして気持ちいいです。
アロマ かゆみ乾燥クリーム
皮膚の乾燥が気になる時や、お肌や肉球を健康に保ちたい時等に。
アロマ 肉球クリーム
天然素材&プロポリス入の保湿クリーム。愛犬の足裏を保湿します。
アロマ 傷用クリーム
舐めても安心。
小さな傷や皮膚のトラブルに!
執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。