前回は眼の健康に良い食材として、ブルーベリーやカシスなどをお知らせしました。
これらベリー果実には、抗酸化力をもつアントシアニンという紫色の色素が含まれています。
今回は紫色をしたサツマイモの優れた健康機能について紹介します。
目次
紫サツマイモ
鹿児島に旅行に行くと、駅や空港で紫色のサツマイモを使ったおみやげがたくさん売られています。
この紫サツマイモは紅イモとも呼ばれていて、抗酸化物質であるアントシアニンをたっぷりと含んでいます。
イモの色と抗酸化力
サツマイモの品種というと『べにはるか』がありますが、私たちが実際に食べている塊根部の色の違いにより多くの種類があるようです。
このサツマイモの色と抗酸化力の関係を調べた報告があります(沖 智之ら 独立行政法人:九州沖縄農業研究センター 2009年)。
試験結果によると、白・黄・橙色のサツマイモの抗酸化活性は201~225であったのに対して、紫色のサツマイモの値はおよそ10倍の2,251もありました(単位:DPPHラジカル消去活性μmol-TE/100g-FW)。
このように紫色のサツマイモは美味しさもさることながら、高い抗酸化力をもつ点から、さまざまな健康機能についての研究が進んでいます。
アヤムラサキの開発
みなさんは『アヤムラサキ』という品種のサツマイモをご存知でしょうか?
アヤムラサキは長年の品種改良の結果、1995年に農林水産省に新規登録された紫サツマイモです。
参考までに少しこのアヤムラサキの開発の流れを見ておきましょう(山川 理ら 九州農業試験場 1996年)。
紫サツマイモは元々九州や沖縄にありましたが、市場価値が高いことを受けて、アントシアニン含有量と収穫量の多い新品種の改良が始まりました。
そして紫イモ系の「九州109号」と多収穫系の「サツマヒカリ」を掛け合わせてできたのが『アヤムラサキ』です。
アヤムラサキの能力
紫イモ系を母、多収穫系を父として開発されたアヤムラサキは両系統の良い点をしっかり受け継いでいます。
母方の九州109号と比較して、アヤムラサキの能力はアントシアニン含有量は83%、収穫量も32%アップしています。
このように改良品種のアヤムラサキは、紫サツマイモの代表として広く国内に普及しています。
紫サツマイモのアントシアニン
天然色素アントシアニンはいろいろな植物に含まれていますが、すべてが同じ性能というわけではありません。
これは各植物中のアントシアニンは1つの物質ではなく、いくつかの成分の組合せから成っているためです。
成分構成と抗酸化力
高知県工業技術センターの森山洋憲らは、18種類の植物からアントシアニンを抽出してその抗酸化活性を比較しました(2003年)。
その結果、同じ量のアントシアニンでも抗酸化活性には次のような差が確認されました。
《高活性グループ》
・エンドウ豆のさや(68.0%)
・赤ジャガイモ(61.0%)
・紫サツマイモ/アヤムラサキ(59.0%)
《中低活性グループ》
・ブドウの果皮(44.8%)
・ブルーベリーの果皮(41.1%)
・紫キャベツ(31.2%)
紫サツマイモ/アヤムラサキに含まれるアントシアニン中には、現在8種類の物質が確認されています。
このように抗酸化物質であるアントシアニンですが、植物の由来によって成分構成が異なり、これによりその性状にも違いが生まれます。
熱安定性
前回、ブルーベリージャムを作る時の注意点として、過度の加熱(100℃ 15分間)は避けましょうというのを紹介しました。
このようにブルーベリーアントシアニンは熱に弱いのですが、今回のアヤムラサキのアントシアニンはどうでしょうか?
少々過酷な実験ですがアヤムラサキでサツマイモチップスを作り、アントシアニンとその抗酸化活性の残存割合を調べた報告があります(九州沖縄農業研究センター 沖 智之ら 2001年)。
アヤムラサキを厚さ1.5㎜にカットし、150℃の油で揚げるという加熱条件において、1分間の加熱ではアントシアニンおよび抗酸化活性はほぼ100%残っていました。
さらに3分間加熱してもアントシアニンは約65%、抗酸化活性は約90%もキープされていました。
このようにアヤムラサキには、熱に対して非常に高い安定性をもつアントシアニンが含まれているということが判ります。
これより紫サツマイモ/アヤムラサキはみなさんが自分で調理したり、またサプリメントに使用されている場合でも、アントシアニンの熱失活リスクは低く安心して利用できると考えられます。
紫サツマイモの健康機能
紫サツマイモの色素アントシアニンは、植物由来という安心感から食品の着色料(食品添加物)として広く使用されています。
さらに、がんを抑える働きや血糖値の上昇を抑える作用なども確認されています。
最後に健康機能を2つ紹介しましょう。
血圧降下作用
科学技術振興事業団の小林美緒らは、ラットを使って紫サツマイモ・アントシアニンの血圧降下作用の確認を行いました(2005年)。
●供試動物 高血圧ラット
●供試品 アヤムラサキより抽出したアントシアニン
●グループ
対照群
試験群 …アントシアニンを200㎎/㎏、または400㎎/㎏投与
結果では、高血圧状態にしたラットにアントシアニンを400㎎/㎏投与したグループにおいて、2時間経過後から収縮期血圧(=最高血圧)の低下が確認されました。
そしてこの作用は投与8時間後も維持されていました。
この高い血圧を下げるという働きは、紫サツマイモ・アントシアニンがもつ抗酸化活性と血管弛緩作用によるものと報告者の小林は考察しています。
肝臓機能改善作用
紫サツマイモ・アントシアニンのもう1つの健康機能として、弱った肝臓の働きを応援するというものがあります。
肝臓は体の中の化学工場と言われるように、炭水化物・脂質・タンパク質の代謝や解毒機能などさまざまな仕事をしている臓器です。
私たちやペットが健康診断を受けて血液検査の結果を見ると、肝機能検査のところに「AST(GOT)・ALT(GPT)・LDH」などの項目があります。
これらは代謝や解毒に関わる酵素のことで、肝臓の細胞が壊れると血液中に流出してきます。
従って、これらの数値が高いことは肝機能の低下を意味します。
農林水産省九州農業試験場の須田郁夫らは、AST(GOT)・ALT(GPT)値が高い人を対象に次のような試験を実施しました(1998年)。
●被験者
…肝臓機能要注意の診断を受けた男女45人
●試験品
…高アントシアニンジュース
(紫サツマイモ、リンゴ、ミカンの搾り汁を含む)
●飲用条件
…上記ジュース120mLを毎日28日間摂取
GOTの値が高い5人の結果を確認してみましょう。
高アントシアニンジュースを飲む前60以上もあったGOT値は、14日後では50前後にまで低下し、この値は飲用を終了した42日目までも保たれていました。
ヒトのGOTの基準値は10~40IU/Lとされていますので、なかなか良好な結果と言えます。
また肝臓の酵素LDHについて見てみると、医師から肝臓機能要注意と指摘された期間5年未満のグループは飲用前の数値の8.9%低下しました。
これに対し要注意期間が5年以上のグループでは0.9%、すなわち低下作用はほとんど認められませんでした。
アントシアニンは治療薬ではありませんので、日頃からの健康維持ツールの1つとして摂取するのが正しい使い方であるといえます。
ポリフェノールの1つである天然色素アントシアニンは高い抗酸化力をもった物質ですが、その由来とする植物(野菜、果物)により性状に若干の違いがあります。
ブルーベリーに含まれるアントシアニンは眼に良い働きをするとして広く知られていますが、過度の熱には弱いというハンディがありました。
今回紹介した紫サツマイモに含まれているアントシアニンにも酸化ストレスから体の細胞を守ってくれる抗酸化能力があります。
そして熱にも強いため現在ではいろいろな健康食品やサプリメントへの応用が拡がっています。
今後もベリー果実や紫サツマイモのように良質なアントシアニンを含み、みなさんの大切なペットの健康を応援してくれる食材を紹介して行こうと考えています。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。