自分たちが食べている健康に良いものはペットにも食べさせたい、とオーナーのみなさんが考えるのはごく自然なことです。この中でビタミンや食物繊維が豊富な果物は、ペットの食事やおやつにぜひ取り入れたい食材の1つです。
目次
【好きな果物】
新鮮な果物は食後のデザートやおやつなど、いろいろな場面で広く食べられています。ではみなさんが好きな果物は何ですか?
日本人が好きな果物
総務省統計局「家計調査年報 2020年」というなんだかすごそうな調査報告書があります。これによると1世帯あたりの果物の年間支出金額は33,912円円、そして私たちが購入している人気の果物は次の5つでした。
・バナナ(4,378円)
・リンゴ(4,107円)
・ミカン(3,640円)
・イチゴ(2,792円)
・ブドウ(2,551円)
バナナがトップというのはなるほど納得ですが、2位につけていて意外とがんばっているのがリンゴでした。
「毎日くだもの200g運動」
みなさんは「毎日くだもの200g運動」というのをご存知でしょうか?これは平成12年に国が決定した食生活指針のことで、健康のために果物を1日200g食べましょうというものです。
日本人が好きな果物第1位はバナナですが、200gというと2本分にあたります。またリンゴなら1個、ミカンでは2個に相当します。まあ食べられない量ではありませんが、毎日となるとけっこう大変です。
では、どれくらいの人が毎日果物を200g以上摂っているのでしょう?厚生労働省の「平成28年国民健康・栄養調査」によると30代で最も少なく、年齢が高くなるにつれてその割合は増える傾向があります。60代では24.3%、70代以上では30.5%の方々が毎日200g以上の果物を食べています。
毎日食べない理由
先程の調査結果では1日1人あたりの平均果物摂取量は98.9gであり、目標とする200gの半分量しかありませんでした。
全国の20~70歳の男女2,000人を対象にした「果実の消費に関するアンケート調査報告(令和2年)」というものがあります(公益財団法人中央果実協会)。この中で果物を毎日食べない人(1,485人)にその理由を聞いたところ、次のような回答が得られています。
・他の食品に比べて値段が高い(36.4%)
・日持ちせず買い置きができない(34.7%)
・皮をむくなど手間がかかる(29.3%)
・他に食べる食品がある(25.2%)
・あまり好きでない(10.8%)
・太るといけない(10.4%)
果物=甘い=太ると少し誤ったイメージを持っている人もいる様ですが、この中で日持ちしないといった保存性の問題や、皮をむくのが面倒など、なるほどと思う果物の特徴を見つけることができます。
【ドライフルーツ】
果物は水分も栄養分も豊富な食材です。したがって傷みやすく、スナック菓子などと比べると日持ちしません。果物が広く食べられていない理由の1つである保存期間が短いという点は新鮮食材の弱点でもあります。
人気上昇中のドライフルーツ
果実の消費に関するアンケート調査報告には「1年前と比べて食べる機会が増えた果実は何ですか」という質問があります。この回答として高い割合を示すものに生鮮果実(15.3%)、カットフルーツ(16.6%)などがありましたが、この中で最も高かったのがドライフルーツ(21.5%)でした。
ドライフルーツの人気が高まっている理由には何があるのでしょうか?それはちょうど「毎日果物を食べない理由」の裏返しと考えられます。ドライフルーツには新鮮味は有りませんが、水分量は15~20%と乾燥しているため、傷みにくく保存が利きます。
さらに生鮮果実と違ってドライフルーツは洗ったり、包丁や手で皮をむく必要がありません。そのままおやつ感覚で食べたい時にすぐ食べることができる手軽な食材という点が人気の理由でしょう。
ペットへの注意点
さてこのようにドライフルーツを食べる機会が増えてくると、ペットのおやつとしても利用したい気になってきます。ここでペットには与えていけないドライフルーツを確認しておきましょう。
まずはドライフルーツの代表であるレーズン(干しブドウ)です。いわゆるペットのブドウ中毒というものですが、イヌが生のブドウやレーズン、ブドウジュースを摂取した場合に下痢や嘔吐、重症事例では急性腎不全を発症することがあります。
しかし、このブドウ中毒の原因物質は特定されておらず、またブドウを食べたすべてのイヌが中毒を起こすわけでもありません。現在でも不明な点が多いブドウ中毒ですが、レーズンには十分注意しましょう。
この他にもイチジクやプルーンについてもペットの健康を害するという報告があります。このため、私たちが食べているいろいろな果物が入ったミックスドライフルーツの給与は控えた方が安全です。
【ドライアップル】
現在、マンゴー、イチゴ、パイナップル、バナナなどいろいろなペット向けのドライフルーツが市販されています。この中で栄養面からドライフルーツに適しているのがリンゴです。
ドライフルーツのビタミンC
果物がもつ一番の魅力はビタミンが豊富、特にビタミンCをたっぷり含んでいる点ではないでしょうか。しかし一般的にドライフルーツは熱風乾燥により作られるため、熱にデリケートなビタミンCは失われているような気がします。
秋田県果樹試験場の近藤悟(1992年)や高知県立大学の廣内智子(2017年)らの研究者は、リンゴに含まれるビタミンCは熱に壊れにくい性質をもっていると述べています。このためリンゴはドライフルーツなど加熱を伴う加工食品に適した果物といわれています。
ポリフェノールの濃縮
以前、「すい臓ケアフード」のテーマのところでリンゴを取り上げたのを覚えていますか?リンゴはリパーゼブロック食材の1つであり、リンゴポリフェノールには脂質の消化を抑えて中性脂肪の値を下げる作用があるというものでした。
ではこのリンゴがドライフルーツになった場合、大切なポリフェノールはしっかりと保持されているのか気になります。4つの品種のリンゴ(紅玉、秋映、シナノゴールド、シナノスイート)を用いて、ドライフルーツにする前後のポリフェノール量を測定した報告があります(竹内正彦ら 一般社団法人長野県農村工学研究所 2019年)。
試験結果ではリンゴに含まれるポリフェノールは乾燥後消失することはなく、逆に4.1~5.1倍にまで濃縮されていました。このことから生のリンゴはもちろんのこと、ドライアップルも愛犬のすい臓ケアフードの食材として十分に活用できることが判ります。
リンゴポリフェノールの保存性
生鮮果実と違いドライフルーツの便利なところは保存が利くことです。水分が少ないため雑菌の繁殖が抑えられ日持ちする点が魅力です。最後にドライアップル中のポリフェノールの保存性について確認しておきましょう。
竹内は保存温度とリンゴポリフェノールの残存量との関係も報告しています。ドライアップルを5℃(冷蔵)、20℃(常温)、35℃(高温)の3つの温度で9か月間保存し、試験開始時のポリフェノール量に対する残存割合を算出しました。
結果、35℃保存では急激に消失することが判りました。5℃と20℃では1か月目までに80%まで消失しますが、その後3か月間はそのままの割合でポリフェノールはキープされていました。
保存性が良好なドライアップルですが、リンゴポリフェノールに着目した場合、冷蔵または常温保管で3か月間が一つの目安と考えるのが良いでしょう。
本来は肉食動物であるイヌやネコにも果物を食べさせたい時にドライフルーツは手頃な食材です。「毎日くだもの200g運動」の推進のために、ペットと一緒にオーナーのみなさんもドライフルーツを活用されてはいかがでしょうか。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。