獣医師が解説

ペットの栄養編: テーマ「実も皮も体に良いかぼちゃ」

皮は深い緑色、中身は鮮やかな黄色のかぼちゃは、見るからに健康に良さそうな感じがします。かぼちゃはカロテンをたくさん含む野菜として知られています。

【かぼちゃの健康応援成分】

かぼちゃにはビタミンを中心とする健康応援成分がいろいろ含まれています。ここではその代表的なものを3つ紹介します。

3つの健康成分

まずはビタミンAです。ビタミンAはあぶらに溶ける脂溶性ビタミンの1つで、皮膚や粘膜(気管、消化管)の健康維持のしごとをしています。また網膜のロドプシンの生成にも関係しているため、欠乏すると夜盲症になることがあります。

ビタミンAを含む動物性の食材として卵やレバー、植物性の食材ではカロテンが豊富なニンジンやかぼちゃといった緑黄色野菜があります。

2つ目はカロテノイドという成分です。カロテノイドとは野菜や果物に含まれる黄色・橙色・赤色の脂溶性色素をいいます。私たちが知っているものとしてβカロテン、βクリプトキサンチン、ルテイン、アスタキサンチンなどがあります。そしてこれらは共通して抗酸化作用をもっています。

この中でβカロテンとβクリプトキサンチンは体内でビタミンAに変わるため、ビタミンA前駆物質(プロビタミンA)と呼ばれています。

最後にγ-アミノ酪酸があります。γ-アミノ酪酸はGABA(ギャバ)と言った方が馴染みがあると思います。GABAはビタミンではなくアミノ酸の1種で、脳に働いてストレスを緩和するリラックス作用があることが有名です。加えて近年、血圧の上昇を抑える働きがあることも報告されています。

加熱調理と抗酸化力

かぼちゃを生で食べることはありません。煮物にしたり、スープにしたり熱を加えるとホクホクねっとり感や甘味が増します。ではこの加熱により、先ほど紹介した体に良い成分がマイナスの影響を受けないか気になります。

呼吸をしている私たちヒトやペットは、日々活性酸素による害を受けています。この活性酸素を分解・除去するのが野菜・果物に含まれるビタミン、ポリフェノール、カロテノイドなどの抗酸化成分です。

かぼちゃの抗酸化活性に対する加熱調理の影響について調べたデータがあります(三上奈々ら 帯広畜産大学 2019年)。生のかぼちゃとオーブンレンジ加熱(180 ℃、35分間)、電子レンジ加熱(500 W、4分間)した3つについて総ポリフェノール量と抗酸化活性を比較したところ、ほとんど損失は確認されませんでした。

これよりかぼちゃの抗酸化活性は、通常の加熱調理においても影響は受けずキープされることが判りましたので、みなさんも安心してペットの食事やおやつ作りに挑戦してみて下さい。

【かぼちゃのカロテノイド】

野菜・果物に含まれる赤や黄色の色素であるカロテノイドの中でも、βカロテンは特に有名です。ここではカロテノイドを効率よく吸収する工夫について紹介します。

緑黄色野菜のカロテノイド

野菜に含まれるカロテノイドにはたくさんの種類があります。その中でβカロテンとβクリプトキサンチンの含有量を比較してみましょう。対象は手作りフードによく利用されているニンジン、ブロッコリー、そして西洋かぼちゃです(日本食品標準成分表 2015年版七訂)。

βカロテンについてはニンジンが最も多く、100gあたり8,600μgあります。次いでかぼちゃ4,000μg、そしてブロッコリー810μgとなっています。やはり橙色が鮮やかなニンジンにはβカロテンがたくさん含まれています。

次はβクリプトキサンチンです。βクリプトキサンチンは温州ミカンに特徴的に含まれるカロテノイドとして有名で、近年は動脈硬化や血糖値、骨密度などとの関係が研究されています。

100gあたりのβクリプトキサンチンの含有量はニンジン0、ブロッコリー7μg、かぼちゃ90μgです。このように見るとかぼちゃは幅広くカロテノイドを含む緑黄色野菜であるといえます。

カロテノイド吸収アップ策①

活性酸素から体を守ってくれるカロテノイドは脂溶性の色素です。従って食事として食べる時は、油で炒めると吸収率はアップします。しかしペットの食事やおやつの場合、油と一緒に与えるというのはなかなか難しいのではないでしょうか?

カゴメ㈱の佐々木啓乃らは、トマトジュース(5人)とキャロットジュース(7人)を次のような条件で飲んでもらい、体内のカロテノイド吸収量を測定しました(2006年)。

●対照群 ジュース300gのみ摂取
●試験群 ジュース300gおよび牛乳300gを同時摂取

吸収されたカロテノイドの体内輸送量を測定した結果、試験群はトマトジュースのリコピンは3倍以上、キャロットジュースのβカロテンは約2倍の値が確認されました。すなわち脂溶性色素であるカロテノイドは、牛乳と一緒に摂ると体内の吸収率がアップするということです。

カロテノイド吸収アップ策②

次はもう1つのカロテノイドである、βクリプトキサンチンについてです。ユニチカ㈱は次のような乳製品との同時摂取によるβクリプトキサンチンの吸収率を調査報告しています(プレスリリース 2012年)。

●被験者 健康な成人12人(男女各6人、平均年齢39歳)
●グループ
  対照群 …βクリプトキサンチン+ミネラルウォーター
試験群 …   〃      +ヨーグルト飲料
〃      +牛乳

それぞれ摂取7時間後の血清βクリプトキサンチン濃度を測定すると、対照群に対してヨーグルト飲料摂取群は約1.6倍、牛乳摂取群は約1.9倍の値を示しました。この場合も乳製品(=乳脂肪)と一緒に摂取することにより、腸からの吸収が促進されることが判ります。

βカロテンもβクリプトキサンチンもカロテノイドの仲間であり、かぼちゃには豊富に含まれています。みなさんのペットにかぼちゃを使ったおやつを与える時には、ぜひ牛乳を一緒に飲ませてあげましょう。抗酸化活性をもつカロテノイドの吸収がぐーんとアップするでしょう。

【かぼちゃのGABA】

GABA(ギャバ)というと発芽玄米に含まれる健康成分としてよく知られています。GABAは農産物に広く存在しているアミノ酸の1つであり、実は今回のテーマであるかぼちゃにも含まれています。

GABAをつくる酵素

アミノ酸はいくつもつながってタンパク質を作ります。GABAもアミノ酸ですがタンパク質の構成には関係せず、脳や脊髄といった神経系での「情報伝達物質」としての仕事をしています。

GABAは同じアミノ酸であるグルタミン酸に酵素が作用して生成されます。この酵素をグルタミン酸脱炭酸酵素といいますが、これをたくさんもっている野菜はGABAをたくさん作り出せる=GABA含有量が多い野菜ということになります。

大切なかぼちゃの皮

かぼちゃを料理する時、皮は硬くて剥くのが大変です。食べても果肉に比べて甘さはないのですが、実はこの皮の部分が大切でした。かぼちゃのどこにGABAを作り出す酵素がたくさん存在するのかを調べた報告があります(大能俊久ら 福井工業大学 2020年)。

大能らは西洋かぼちゃを各部位に切り分け、これにグルタミン酸ナトリウムを加えて酵素と反応させました。その結果、ふだん私たちが食べている黄色の果肉よりも、緑色の皮の部分で多くのGABAが生成されました。これよりかぼちゃは硬い皮にGABAをたくさん含んでいることが判ります。

フードロス削減の意味からもかぼちゃを調理する時は、皮の部分も捨てずに活用するのが良いでしょう。

GABAと血圧

最後にGABAがもつ健康応援に関係する機能を紹介しましょう。GABAは神経系に作用してリラックスさせる働きがあります。このリラックス作用の1つとして血圧への影響を確認した報告があります(鵜沢昌好ら(株)ロッテ中央研究所 2002年)。

鵜沢らは高血圧ラットに食塩を添加したエサを与え、かぼちゃから生成したGABAを給与した群(0.1%、0.5%)と給与しない対照群を4週間観察しました。試験を開始する前の血圧はどの群も142mmHgでしたが、その後各群ラットの血圧は次のような値を示しました。

○対照群 …220mmHg
○GABA給与群 …203mmHg(0.1%)、190mmHg(0.5%)

今回の試験データからGABAは血圧の上昇を抑える作用があるということが認められました。これはGABAが神経系に働いてリラックスさせる=血圧を下げるというマイルドな反応の1つと考えられます。従って血圧低下作用ではなく、あくまでも「血圧上昇を抑制する作用」というのが正しい表現です。

一般にかぼちゃの消費は冬に伸びます。食事としては煮物のイメージが強いかぼちゃですが、お菓子やおやつとしてなら年中食べることもできます。これから暑さで食欲が落ちる季節ですが、ペットの健康維持および水分補給の意味から、かぼちゃと牛乳をセットで与えるのはとても理にかなったメニューといえます。

(以上)

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執筆獣医師のご紹介

獣医師 北島 崇

本町獣医科サポート

獣医師 北島 崇

日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。

本町獣医科サポートホームページ

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