牛乳や乳製品がCa(カルシウム)を豊富に含んでいることは広く知られています。乳製品というとパッとチーズやバター、ヨーグルトが頭に浮かびますが、もう1つ隠れた存在として脱脂粉乳/スキムミルクがあります。
目次
【スキムミルクとは?】
スキムミルクは冷蔵庫に入れなくても常温で保管できる大変便利な乳製品です。みなさんはこのスキムミルクがどのようにして作られているかご存知でしょうか。
スキムミルクの製造工程
牧場で牛から搾られた乳を「生乳」といいます。生乳を加熱殺菌したものがスーパーやコンビニで売られている飲用牛乳、すなわち「牛乳/ミルク」です。これとは別ルートで、生乳を遠心分離して乳脂肪分を取り出したものが生クリームやバターです。
搾りたての生乳から乳脂肪分を取り出した残りを脱脂乳といいます。そしてこれを濃縮・乾燥させたものが「脱脂粉乳/スキムミルク」です。ということでスキムミルクは牛乳と比べて脂肪分のみが極端に少なく、その他の成分をそのまま含むという栄養特性をもった粉末乳製品ということになります。
スキムミルクの用途
スキムミルクは生クリームやバターを製造する時の副産物です。只今、コンビニスイーツがものすごく流行っていますが、ケーキ作りにはこの生クリームやバターが欠かせません。したがってこれらの需要が増えて製造すると、その分スキムミルクもどんどん出来てくることになります。
しかし、スキムミルク自体を見かけることは差ほどありません。いったいどこで消費されているのかを調べたところ、令和元年度のスキムミルクの国内消費量はおよそ12万8,000トン、その内家庭内の消費量は400トン(0.3%)しかありませんでした(alic:農畜産業振興機構 2021年)。
実はスキムミルクの使用先のほとんどは業務用です。全体の1/3は乳業メーカー、2/3は食品メーカーというように乳酸菌飲料、アイスクリーム、パン、お菓子などの原材料になっています。このように知らないうちに様々な食品に入っているスキムミルクですが、私たち消費者が個人として使用しないのは大変もったいないほどの栄養成分が含まれています。
【スキムミルクの利用現状】
国内で製造されるスキムミルクの内、個人が家庭で消費している割合は全体の0.3%しかありません。これは使い勝手が悪いのか、そもそもスキムミルク自体を知らないのでしょうか。ここでスキムミルクという食材に関するアンケート結果からその現状を見てみましょう。
認識度
日本女子大学の五関正江は20代の若年層を全体の60%以上とする809人(男性363人、女性446人)を対象に、スキムミルクに関する聞き取り調査を行っています(2006年)。
まずは『スキムミルクという食品を知っていますか?』という質問です。これに対して全体のおよそ半分455人(56%)が知っていると回答しましたが、その内訳は男性(33%)、女性(76%)でした。
続いてこの455人に『スキムミルクの栄養特性を知っていますか?』と聞いたところ、63%(男性:46%、女性:70%)から知っているという答えがありました。スキムミルクの認識度は男女差がとても大きいようです。
購入経験
次は『スキムミルクを自宅に常備していますか?』という質問です。これへの回答は常にある・時々ある(35%)、ない(55%)、わからない(10%)でした。さらに『スキムミルクを購入したことはありますか?』という問いに関しては、購入経験ありとの回答は27%(男性:11%、女性:33%)しかありませんでした。
スキムミルクはスーパーで売られていますが、バターやチーズと比べるとその種類は少ないことに気が付きます。まだまだ食生活の必需品というレベルまでには至っていないことが判ります。
利用経験
最後は実際の利用経験についてです。『スキムミルクを使った料理を食べたことはありますか?』、『スキムミルクをお菓子作りに利用したことはありますか?』と質問したところ、あるとの回答はそれぞれ33%(男性:10%、女性41%)、22%(男性7%、女性27%)でした。
以上いずれの回答においても男性:女性=1:2~3という割合でした。これは一般的に男性に比べると女性の方が料理やお菓子作りに関心が高いことが背景にあると思われます。とはいえ、スキムミルクは認識度も利用度も一般家庭への浸透度はまだまだ低い食材であることが改めて判ります。
【スキムミルクの栄養特性】
スキムミルクが身近な食品やお菓子に広く使用されているのは、栄養的に優れていて、なおかつ粉末状で保管しやすいためです。ここでスキムミルクの栄養内容を確認します。
高タンパク質・低脂肪
スキムミルクと似たような食材に全乳粉と乳児用の粉ミルクがあります。これら3つを比べてみるとスキムミルクの特性が判ります。まずは牛乳をそのまま粉末状にした全乳粉100gにはタンパク質(25.5g)、脂質(26.2g)、炭水化物(39.3g)と3大栄養素がそろって含まれています。粉ミルクは赤ちゃん用ですので消化吸収のことを考えて、タンパク質はやや抑えめ(12.4g)、炭水化物は多め(55.9g)の内容です。
これに対してスキムミルクはタンパク質(34.0g)、脂質(1.0g)、炭水化物(53.3g)となっています。生乳からバターやクリーム成分を取り除いた脱脂粉乳がスキムミルクですので、まさに高タンパク質・低脂肪の代表のような食材です。
Caたっぷり
では総ミネラルとCa量を確認しましょう。ミネラル全体量としては粉ミルク(2,300㎎)に比べて全乳粉(6,000㎎)とスキムミルク(7,900㎎)は高い値です。そしてCaに関しても同様で粉ミルク(370㎎)、全乳粉(890㎎)、スキムミルク(1,100㎎)という含有量です。
このようにスキムミルクは脂質の摂取量を増加させることなく、タンパク質とCaの両方を手軽に補給できる食材といえます。年齢が進むとヒトと同じくペットも体重が増える傾向があります。加齢と肥満は同時に骨への負荷となるため、高齢ペットの骨の強化にはこのスキムミルクは適した食材といえます。
同じ乳製品ですがあまり目立たないのがスキムミルクです。しかしその栄養価値はとても高く、20gで牛乳1本分200mlと同等量のCa(220㎎)が得られます。粉末状でペットの手作りフードの材料やパラパラとトッピングするなど、実際は利用範囲も広いスキムミルクをみなさんもどうぞお試し下さい。
(以上)
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執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。