みなさんは「ラム&ライス」という言葉を聞いたことはありませんか?これは食物アレルギーリスクの低減という点から、肉はラム肉、小麦の代わりに米を使ったフードの提案というものです。このアレルギーとは別に、これからはペットフードやおやつに米が使われる機会が増えそうです。
目次
【小麦と米】
昨年の夏ぐらいからでしょうか、ありとあらゆる食料品の値上げが始まり、現在もまだまだ続いています。背景にはヨーロッパ情勢や金融・為替などが絡んでいるのですが、一言でいうと日本が食材の大部分を輸入に頼っていることが大きな理由です。
食料自給率
よく耳にする食料自給率は「国内生産量÷国内消費量」で計算されます。この時、食料の熱量を指標にしたものが「カロリーベース食料自給率」です。日本の食料自給率は39%(平成24年度計算)ですので、私たちが食べているものの約60%は輸入品ということになります。ちなみに世界の国々の自給率は米国(130%)、オーストラリア(187%)、カナダ(223%)、韓国(50%)とのことです。
食材ごとの自給率では小麦(12%)、大豆(8%)、米(96%)と極端な違いが見られます。この中で小麦はパン(30%)、日本めん(11%)、中華めん等(23%)、お菓子(14%)、その他家庭用など(22%)と私達の食生活に幅広く使われているため価格上昇の直撃を受けています。
ここで小麦の代替品として100%近くが国内生産されている米が視線を集めています。
いろいろな米粉
米にはうるち米(白米)と、もち米(お餅)の2種類があります。共に食べ方が決まってしまっているのですが、近頃はフォーやライスペーパーのように米粉から作られている海外食材も広まってきました。
日本では昔から米粉は和菓子の材料として使われています。うるち米を粉に挽いたものが上新粉(団子、ういろう)、もち米ではもち粉(大福、求肥)、白玉粉(お汁粉の白玉)などがあります。
このように米は白米やお餅として食べているため、わざわざ粉に挽いた米粉を主食としても食べるという考えはありませんでした。しかし、昨年からの小麦粉の値上がりを受けて、代替品としての新しい米粉「微細粒米粉」が注目されています。
【米粉利用の現状】
現在のヨーロッパ情勢とは関係なく、米粉の利用推進は10年ほど前から提唱されてきました。これは日本の食料自給率アップと米の消費量減少を抑えるためでした。ということで、日本政策金融公庫は2012年に「米粉食品に対する消費者動向調査」というものを行っています。この内容を見てみましょう。
米粉の認知度
全国20~70代の男女各1,000人(合計2,000人)を対象に、次のようなアンケートを実施しました。
Q「米粉を購入したことがありますか?」
A:購入し調理したことがある(17.4%)
購入したことはない(82.6%)
Q「米粉がいろいろな食品に利用されていることを知っていますか?」
A:知っている(75.4%)、知らない(24.6%)
米粉を食材として知っているものの、実際に買って使っているのは特定の消費者であるという結果でした。小麦粉と比べると大きな違いといえます。
米粉を利用した食品
では、上記で知っていると回答した人への質問です。
Q「米粉を使った商品で知っているものは何ですか?(複数回答)」
A:パン(97.0%)、ケーキ(55.5%)、洋菓子(54.4%)、和菓子(40.2%)、
スナック菓子(38.9%)
Q「米粉を使った食品についてどのようなイメージを持ちますか?(複数回答)」
A:新しい食感がする(68.5%)
小麦粉の代替品(46.9%)
国内農業の存続に役立つ(44.6%)
国産原料である(43.1)
美味しい(40.0%)
米粉については、小麦粉の代替食材→パン・お菓子への応用というイメージが強いことがよく判ります。同時にまだあまり普及していないために、米粉食品への新しい食感に期待が大きいという結果も確認されました。
米粉普及のポイント
最後は米粉の消費を拡大させるための必要ポイントに関する質問です。
Q「米粉食品の価格についてどう思いますか?」
A:品質に比べて割高感がある(36.5%)
品質に見合った値段であると思う(61.4%)
品質に比べ割安感がある(2.1%)
Q「米粉食品の利用を進めていくために重要なことは?(複数回答)」
A:値段を下げる(49.6%)
食品数を増やす(38.7%)
美味しくする(27.3%)
栄養面・健康面の長所をPRする(24.7%)
米粉を利用していることをパッケージに一層明示する(22.2%)
すでに私たちの食生活に必要不可欠となっている小麦粉を米粉に置き換えるには価格と美味しさ、すなわちコストパフォーマンスが重要であるという結果です。このアンケートは小麦粉が今よりも安く安定供給されていた2012年に実施されたものです。逆に考えると今こそ米粉を活用するチャンスといえそうです。
【新しい米粉の開発】
只今、農林水産省は米粉の利用拡大推進策として、①商品開発 ②消費拡大 ③製造能力強化 ④米粉用種子の増産という4つ支援事業を展開しています。この中の①および②を担当する日本米粉協会という団体があります。
日本米粉協会
日本米粉協会とは平成29年に設立された団体で米粉製造業者、食品製造業者、米生産者、消費者などから構成されています。米粉の国内普及と輸出拡大を目的として、大きく次の3つの取り組みを行っています。
❶ノングルテン米粉の第三者認証制度の運営
…「ノングルテン米粉認証マーク」
❷国内における米粉製品の普及拡大
…各種料理・おやつのレシピ紹介
❸米粉の用途別基準の設定
…「推奨マーク」の付与
冒頭でペットフードのラム&ライスに触れましたが、特定体質のヒトは小麦粉食品に含まれるグルテンに対するアレルギー反応を示します。アナフィラキシーショックにより生命に係わる場合があるため、グルテン含有量1ppm以下であることを証明するものが「ノングルテン米粉認証マーク」です。
新タイプの米粉
上新粉やもち粉のように米粉は昔から和菓子に使われていますが、今回日本米粉協会が推進しているのはこれらとは別の新タイプの米粉です。一番の違いは微細粉すなわち小麦粉と同じくらいに粒径が細かいという点です。
協会ではこの新タイプの米粉をアミロースの含有率により1番(お菓子・料理用)、2番(パン用)、3番(めん用)の3つに区分しました。これが用途別基準の「推奨マーク」で、何に適した米粉であるかが明確になりました。
なおアミロースとはブドウ糖が直線状につながってできているデンプンのことで、含有量は食感に関係します。使用する食品の食感を考慮して1番~3番の3つに区分しているということです。
フードへの利用の期待
今までの米粉の年間需要量はおよそ2万トンで長年横ばい状態でした。これが平成29年の日本米粉協会の設立以降少しずつ増えてきて、現在では2倍の4万トンになりました。(ちなみに小麦の需要量は約550万トンです)
小麦はペットフードにおいても重要な原材料です。材料分類では穀類にあたり「小麦、小麦粉、パン粉、小麦フスマ、小麦グルテン」として幅広く使用されています。栄養的には炭水化物(デンプン)や蛋白質、食物繊維の元ですが、小麦粉はドライフードの形状を作る際の固め役にもなっています。
ヒトと比べるとペットの小麦アレルギーはまだ多くはありませんが、国産食材応援の意味を込めて、今後新しいタイプの米粉を使ったフードやおやつが増えてくると思われます。特にケーキやクッキーといったペットのおやつへの利用に期待が膨らみます。
(以上)
執筆獣医師のご紹介
本町獣医科サポート
獣医師 北島 崇
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部獣医学科 卒業
産業動物のフード、サプリメント、ワクチンなどの研究・開発で活躍後、、
高齢ペットの食事や健康、生活をサポートする「本町獣医科サポート」を開業。